スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
保有資格
AFP・2級FP技能士
専門分野・得意分野
生命保険・社会保障・金融全般に精通。保険業界での実務経験をもとに、ユーザー目線で正確かつ中立的な情報発信を行っています。
「変額保険は学資保険の代わりになるの?」と迷う方はとても多いです。確定性を重視しすぎても、リターンだけを追いすぎても、教育費や家計・老後資金とのバランスが崩れやすくなります。
この記事では、学資保険と変額保険の違いから、メリット・デメリット、損しない設計手順までをやさしく整理。教育費と家計・老後資金をトータルで考えた現実的な選び方をまとめました。
まず結論|変額保険は「設計次第」で学資代替にできる
変額保険は、運用成果によって解約返戻金が増減するタイプの保険です。しかし、払込満了時期を高校・大学入学など「学費の山」の前に置き、その後は据置期間や段階解約を活用すれば、学資保険の代替として十分に機能させることができます。
一方で、短期での中途解約は不利になりやすく、為替や市場のブレも避けられません。だからこそ、現預金や円建て保険と組み合わせる「分散設計」が重要になります。
1. 確定性 vs 成長取り込み
学資保険は、あらかじめ受取時期と受取金額が決めやすく、「いくら・いつもらえるか」が読みやすいのが強みです。その一方で、低金利環境では返戻率が伸びにくいという弱点があります。
変額保険は、株式や債券などの市場を通じて成長を取り込める反面、価格変動リスクを抱えています。「どこまで増やしたいか」と「どこまでブレを許容できるか」を家計目線でそろえることがポイントです。
2. 費用(手数料)の見える化
変額保険には、保険関係費・運用関連費・契約管理費など、さまざまなコストが含まれています。これらは毎年じわじわ効いてくるため、必ず「年率換算」で把握することが大切です。
同じ運用利回りを想定していても、費用水準の差だけで最終的な受取額が大きく変わることがあります。
3. 払込満了と受取時期
高校・大学入学の数年前までに払込満了を迎えるように設計しておくと、その後は据置しながら、相場や為替の状況を見て解約時期を調整しやすくなります。
逆に、払込期間の途中で解約すると返戻率が低く、不利になりやすいのが変額保険の特徴です。設計の段階で「払込中に解約しない」動線を作っておくことが重要です。
4. 死亡保障と学費目的の整合
変額保険には最低死亡保障が付く商品が多く、親に万一があった場合でも一定額が残るという点で、純粋な学資保険より安心材料が増えます。
ただし、保障額を必要以上に大きくすると、その分保険料が重くなります。教育費と遺族保障を分けて考え、家計の必要保障額に沿った設計にしましょう。
5. 家計キャッシュフロー耐性
どれだけ良い設計でも、「払込を続けられるかどうか」が実現可能性を左右します。まずは固定費を見直し、生活防衛資金(生活費の6〜12か月分)を確保したうえで、無理のない保険料を決めることが大前提です。
年1回は家計の「決算」を行い、教育費・老後資金も含めた積立配分を見直していきましょう。
注意ポイント
教育資金の全額を変額保険に頼らず、「現預金」「円建て保険」「変額保険」の3つを組み合わせると、必要なタイミングで資金を確実に用意しやすくなります。
学資保険と変額保険の違いを3列表で整理
両者の性質を効率よく理解するために、「特徴・メリット・注意点」を3列表で整理しました。
インフレ局面、金利動向、家計の余力によって最適解は変わります。パンフレットの数字に惑わされず、性質の違いから見ていきましょう。
| 特徴 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 学資保険(円建て) | 受取時期と金額の確実性が高い | 低金利下では返戻率が伸びにくい |
| 変額保険(有期/終身) | 運用次第で解約返戻金の上振れが期待できる | 価格変動による元本割れリスク、費用負担に注意 |
| 変額保険(資産形成重視) | 長期分散投資で成長を取り込みやすい | 短期解約は不利。家計の耐性が前提条件 |
学資代替で使うメリット3つ
変額保険には、学資保険にはない「インフレへの強さ」や「保障機能」による安心感があります。
ここでは、学資目的で使うときに特に効いてくる3つのメリットを整理します。
1. 物価上昇に対応しやすい
金利や株価が上昇する局面では、解約返戻金が増える可能性があります。将来、学費自体が値上がりしても、運用成果でカバーできる余地があるのは変額ならではの特徴です。
その一方で、下落局面もあり得るため、受取時期に幅を持たせたり、据置期間を活用したりする設計が重要になります。
2. 死亡保険金の最低保障
多くの変額保険では、運用が不調でも「最低死亡保障額」があらかじめ決まっています。そのため、運用残高が一時的に下がっても、万一の際に極端な元本割れになりにくいという安心感があります。
ただし、死亡保障を大きくし過ぎると保険料が上がるため、学費+必要保障額のバランスを事前に整理しておきましょう。
3. 税負担を軽減しやすい
払込期間中の保険料は、生命保険料控除の対象になります。課税所得を圧縮できるため、トータルの家計負担を下げる効果があります。
控除額や区分(一般・個人年金・介護医療)は制度改正の影響も受けるため、毎年の年末調整や確定申告の際に漏れなく申告しましょう。
実務ヒント
お子さまの入学予定年の2〜3年前から「どのくらい解約するか」と「相場状況」を毎年チェックし、段階解約・据置の組み合わせをシミュレーションしておくと、慌てずに受取戦略を組めます。
デメリットと回避策:損しないルール
変額保険の大きなリスクは「価格変動」と「費用」です。ここを最初からコントロールできれば、損をする可能性はぐっと下げられます。
以下のチェックポイントを順番に確認しながら、設計段階でリスクを抑えておきましょう。
1. 返戻率が100%超になる時期の把握
解約返戻金が払込保険料総額を上回る「損益分岐点」を、必ず事前に確認しましょう。
この時期より前に解約するとマイナスになりやすく、学費の支出ピークとズレていると「必要なときに損をして解約」という事態になりかねません。
2. 費用(手数料)年率の可視化
保険関係費・運用関連費・契約管理費などの合計が、年率でどの程度なのかを把握しましょう。
投資信託や他の運用商品と比較して費用が高すぎる場合、長期的には不利になりがちです。表面利回りではなく「費用控除後の実質リターン」で比較するのがポイントです。
3. 一部解約の可否・条件
教育費は入学金・授業料・受験費用・自宅外通学費など、段階的に支出が発生します。そのため、「一部解約ができるか」「いくらから可能か」「回数制限があるか」は必ず確認しておきましょう。
解約から入金までのタイムラグも把握し、必要な支払日の少し前に手続きできるようスケジュールを組むことが大切です。
4. 受取分散(段階円転)
解約と円転(外貨建ての場合など)を一度にまとめて行うのではなく、数回に分けて行うことでタイミングのブレを平準化できます。
入学金は早め、授業料は後ろ倒しなど、支出時期に合わせて受取タイミングに幅を持たせると、相場変動の影響を抑えやすくなります。
5. 家計の現金クッション確保
生活防衛資金(生活費の6〜12か月分)を、変額保険とは別に確保しておくことが重要です。これがないと、ちょっとした収入減や急な出費の際に「予定外の中途解約」に追い込まれやすくなります。
毎年の家計チェックで固定費を棚卸しし、積立余力と保険料のバランスを見直していきましょう。
商品比較の前に決めること:選び方の手順
いきなり保険パンフレットを並べて比較すると、返戻率や特約に目が行きがちで「何のために・いくら必要か」がぼやけてしまいます。
先に「家庭側の条件」を数字で整理してから商品を見ると、迷いを大きく減らせます。
商品選びの手順(ブレない設計)
1. 教育費の目標額と時期の確定
中学・高校・大学それぞれで、必要な金額と支出時期が大きく変わります。「いつ・いくら必要か」を年単位で書き出し、その合計とタイミングから逆算して積立額を決めましょう。
進路の希望が変わることもあるため、年に1回は見直して更新していくイメージです。
2. 月額保険料の上限設定
家計の「固定費の何割までを保険料に回せるか」を先に決め、その範囲内で保険料の上限を設定します。
ボーナス払いを併用したり、前納による割引が使えるかどうかも確認しながら、無理なく続けられる金額に落とし込んでいきましょう。
3. 返戻率カーブと損益分岐
各商品が「何年目で返戻率100%を超えるか」「据置することでどの程度伸びるか」を比較します。
楽観シナリオだけでなく、「運用がやや不調だった場合」など悲観シナリオもイメージしておきましょう。
4. 費用内訳と年率影響
パンフレットに記載されている費用項目を洗い出し、トータルで年率何%程度の負担になりそうかをチェックします。
似たような返戻率に見えても、費用水準に差があると長期では大きな差になります。表面上の利回りより、「費用込みで残る額」を重視しましょう。
5. 部分解約・据置の柔軟性
入学金・授業料・自宅外通学費などの「支出カレンダー」に合わせて、柔軟に一部解約や据置ができるかを確認します。
据置中の取り扱いや利率(運用方法)も合わせてチェックし、「受け取り方」の自由度を比較軸に加えましょう。
FPに聞く!教育費×家計のホンネQ&Aインタビュー
ここからは、読者がつまずきやすいポイントを、FPへのインタビュー形式で整理します。傷病手当金や就業不能保険など、家計を守る制度もあわせて確認しておきましょう。
34歳・女性
変額保険で学費を準備するとき、最初に決めるべきことは?
スマホdeほけん
教育費の総額と年ごとの配分、そして毎月の積立上限です。
受け取り方は最初から一括ではなく段階受取を前提にすると、相場のブレに耐えやすくなります。
34歳・女性
収入減に備える制度は何がありますか?
スマホdeほけん
会社員なら、まずは傷病手当金がベースになります(標準報酬日額の約3分の2、最長1年6か月)。
それでも不足する部分は、就業不能保険や生活防衛資金で補う設計を考えましょう。
34歳・女性
相場下落が怖いです。どんな運用ルールが有効?
スマホdeほけん
払込満了を学費前に設定して、その後は据置→段階解約・段階円転という流れが基本です。
あわせて現預金と円建て商品で「基礎部分」を固めておくと、変額部分のブレに振り回されにくくなります。
34歳・女性
学資保険と併用する意味は?
スマホdeほけん
充分にあります。確定性の高い基礎部分を学資保険や定期預金で押さえ、上乗せ分で変額を使うことで、家計の安定と成長取り込みの両方を狙えます。
34歳・女性
費用が気になります。何をチェック?
スマホdeほけん
保険関係費・運用費・管理費の「合算年率」、部分解約の手数料、円転コストなどです。
年率に直して可視化し、ほかの手段とも並べて比較することが大切です。
よくある質問Q&A(学資保険×変額保険)
Q1. 変額保険は本当に学資保険の代わりになりますか?
A. 設計次第で十分代替可能です。払込満了を学費の山より前に置き、据置と段階解約を組み合わせることで、タイミングリスクを平準化できます。
Q2. 元本割れが心配です。どう避ければ良い?
A. 返戻率が100%を超える時期(損益分岐点)以降を受取のメインにし、複数回に分けて解約します。さらに、現預金や円建て保険と併用しておくことで、必要なタイミングの資金は確実に確保しやすくなります。
Q3. 手数料は高いの?何を見る?
A. 変額保険は費用構造が複雑なため、「合算年率」で比較することが大切です。わずかな差でも、長期運用では最終的な受取額に大きな影響が出ます。
Q4. 死亡保険金は減りませんか?
A. 多くの変額保険には最低死亡保障があり、運用が低迷しても一定の保障額は確保されます。運用が好調な場合は、死亡保険金が上乗せされる商品もあります。
Q5. 何歳から始めるのが良い?
A. 早いほど複利効果を活かしやすいですが、お子さまが6歳以降からでも、払込満了を前倒しできれば十分活用可能です。大切なのは、家計に無理のない保険料設定です。
まとめ|変額は有力な代替候補。分散設計でブレを抑える
変額保険は、設計と運用ルール次第で学資保険の有力な代替になり得ます。払込満了を入学前に前倒しし、その後は据置と段階解約でタイミングリスクを分散。さらに費用をしっかり見える化することで、安定性と成長性のバランスを取りやすくなります。
教育費だけでなく、家計全体と老後資金まで視野に入れ、現預金・円建て・変額を組み合わせた分散設計を行うことがポイントです。年に一度の「家計決算」で計画をアップデートしながら、無理のない範囲で最適解を探していきましょう。
監修者からひとこと

スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
学資代替として変額保険を使うかどうかは、①期間設計、②費用水準、③家計のキャッシュフロー耐性の3つでほぼ決まります。払込満了を入学前に設定し、据置と段階円転の余地を持たせれば、市場のブレを和らげつつ成長も取り込みやすくなります。
一方で、費用や家計負担を軽視したまま契約すると、途中解約のリスクが高まり、結果的に「思ったほど増えなかった」と感じることになりかねません。確定性の高い学資保険や定期預金で基礎部分を固め、上乗せ分で変額保険を活用する「二層構造」が、実務上はバランスの良い形です。毎年、家計と相場を振り返る時間を作ることが、後悔しない教育費づくりにつながります。