スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
保有資格
AFP・2級FP技能士
専門分野・得意分野
生命保険・社会保障・金融全般に精通。保険業界での実務経験をもとに、ユーザー目線で正確かつ中立的な情報発信を行っています。
NISA口座で運用していた資産を相続する場面では、「非課税のまま引き継げるのか」「手続きは難しいのか」と疑問を抱く方が多くいます。
実務の現場では、NISAは相続でも非課税だと誤解したまま対応し、税務や資産管理で混乱するケースが少なくありません。
本記事ではFP監修のもと、NISAと相続の基本ルール、相続税評価の仕組み、売却時の税金、実務上の注意点、家計・老後資金への影響までを専門的に解説します。相続時の正しい手続きと税務リスクを理解することで、家族の資産を守る適切な対応が可能になります。
NISA口座は相続できるのか|結論と基本ルールを整理
NISA口座で保有していた金融商品は、相続の対象になります。
ただし、NISAという「非課税の枠」そのものを相続できるわけではありません。
相続が発生した時点で、被相続人のNISA口座は終了します。
非課税制度は相続によって引き継がれない点が最も重要なポイントです。
ここでは、NISA相続の基本的な仕組みを5つのポイントで整理します。
これらを理解することで、相続時の混乱を防ぐことができます。
1. NISA資産は相続財産として扱われる
NISA口座で保有していた株式や投資信託は、通常の相続財産として扱われます。
預貯金や有価証券と同様に、遺産分割協議の対象となり、相続人全員で分け方を決める必要があります。
2. 非課税枠は相続人に引き継げない
NISAの最大の特徴である非課税枠は、相続人には承継されません。
相続と同時に非課税扱いは終了し、以後の運用益や配当には通常の課税が行われます。
3. 相続時点でNISA口座は自動終了
名義人が亡くなった時点で、そのNISA口座は自動的に閉鎖されます。
金融機関に死亡の事実が届けられると、NISA口座での取引は停止され、以後の運用は別口座で行われます。
4. 資産は課税口座へ移管される
相続人が引き継ぐ際、資産は原則として課税口座(特定口座または一般口座)へ移されます。
取得価額の扱いや税務上の処理に注意が必要で、相続時の時価と取得価額の違いを理解しておくことが重要です。
5. 相続税の課税対象になる
NISAであっても、相続税の計算上は通常の金融資産と同じ扱いです。
非課税制度とは別次元で考える必要があり、相続税評価額は相続開始時の時価で算定されます。
重要ポイント
NISA資産は相続できますが、非課税枠は引き継げません。相続時点でNISA口座は終了し、資産は課税口座へ移管されます。
NISA相続時の評価額はどう決まるのか
NISAを相続する際には、「いくらとして評価されるのか」が相続税計算の基礎になります。
FPとしては、非課税運用と相続税評価を混同しないことを特に重視しています。
ここでは、NISA資産の相続税評価の仕組みを詳しく解説します。
評価方法を理解することで、相続税額の概算を把握しやすくなります。
NISA相続時の評価額のポイント
1. 相続開始時の時価で評価
NISA口座の資産は、被相続人が亡くなった日(相続開始日)の時価で評価されます。
購入時の価格ではなく、相続開始時点での市場価格が基準となります。
2. 含み益も評価額に含まれる
NISA口座で運用益が出ていた場合、その含み益も含めた時価が相続税評価額になります。
非課税で運用していた利益も、相続税の計算では資産価値として認識されます。
3. 上場株式は終値基準
上場株式の場合、相続開始日の終値、相続月の平均、前月の平均、前々月の平均のうち、最も低い価格で評価できます。
この評価方法は通常の相続と同じで、NISA口座であっても変わりません。
4. 投資信託は基準価額
投資信託の場合、相続開始日の基準価額で評価されます。
購入時からの値上がり分も含めた評価額となるため、運用成績が良いほど相続税評価額も高くなります。
5. 非課税枠は評価に影響しない
NISAの非課税メリットは「運用益」に限られ、相続税評価には一切影響しません。
通常の課税口座で保有していた場合と、評価方法は全く同じです。
| 評価項目 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 評価基準 | 相続開始時の時価 | 市場価格で日々変動 |
| 含み益 | 評価額に含まれる | 非課税運用でも無関係 |
| 口座区分 | NISA口座 | 相続後は消滅 |
| 上場株式 | 終値または平均の最低値 | 4つの基準から選択可 |
| 投資信託 | 基準価額 | 購入時からの値上がり含む |
注意ポイント
NISAの非課税メリットは運用益に限られ、相続税評価には影響しません。相続開始時の時価が評価額になります。
相続後にNISA資産を売却した場合の税金の仕組み
相続したNISA資産を売却する場合、税金の考え方が変わります。
この点を理解していないと、想定外の課税が生じる可能性があります。
ここでは、相続後の売却時に押さえるべき税務ポイントを解説します。
取得価額の扱いや譲渡益課税の仕組みを理解することで、適切な税務対応が可能になります。
1. 取得価額は被相続人の購入価格を引き継ぐ
相続人が売却する際の取得価額は、被相続人がNISA口座で購入した際の価格を引き継ぎます。
相続時の時価ではなく、元の購入価格が基準となる点に注意が必要です。
2. 相続時評価額と取得価額は別物
相続税評価額(相続開始時の時価)と、売却時の取得価額(購入時の価格)は全く別の概念です。
ここを混同すると計算を誤りやすい点に注意が必要で、税務申告時に問題が生じる可能性があります。
3. 譲渡益には通常の課税が発生
相続後に売却して利益が出た場合、通常の譲渡所得として約20%(所得税15%+住民税5%)が課税されます。
NISAの非課税効果は相続時点で終了しているため、通常の課税口座と同じ扱いになります。
4. 相続税と譲渡所得税は二重課税ではない
相続税と譲渡所得税は別の税金であり、制度上二重課税には該当しません。
相続税は「資産を取得したこと」に対する課税、譲渡所得税は「売却で利益が出たこと」に対する課税です。
5. 確定申告の要否を確認する
特定口座(源泉徴収あり)で受け入れた場合は確定申告不要ですが、一般口座の場合は確定申告が必要です。
口座区分によって手続きが異なるため、金融機関での確認が重要です。
| 項目 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 取得価額 | 被相続人の購入価格 | 相続時の時価ではない |
| 譲渡益課税 | 約20%(所得税+住民税) | 非課税効果は終了 |
| 相続税 | 相続時の時価で課税 | 譲渡所得税とは別 |
| 確定申告 | 口座区分で異なる | 特定口座なら不要も |
| 二重課税 | 該当しない | 別の税金 |
重要ポイント
相続後の売却では、被相続人の購入価格を取得価額として引き継ぎ、譲渡益には通常の課税が発生します。
NISA相続の具体的な手続きの流れ
NISA資産を相続する際の実務的な手続きの流れを理解しておくことで、スムーズな対応が可能になります。
金融機関とのやり取りや必要書類の準備には時間がかかるため、早めの対応が重要です。
手続きの基本的な流れ
まず、被相続人が亡くなったことを金融機関に連絡します。金融機関は死亡の事実を確認すると、NISA口座を凍結し、取引を停止します。
その後、相続人の確定、遺産分割協議、名義変更手続きを経て、課税口座への移管が行われます。
必要書類の準備
相続手続きには、戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書などが必要です。
金融機関によって必要書類が異なるため、早めに確認して準備することが重要です。
実際にNISA資産を相続した人の体験談
実際にNISA資産を相続した人の体験談から、手続きの実態や注意点を知ることができます。
リアルな事例を通じて、自分の対応に役立てましょう。
Pさん(52歳・会社員)のケース
Pさんは父親が亡くなり、NISA口座で約500万円の投資信託を相続しました。「非課税だから相続税もかからない」と思っていましたが、実際には相続税の対象となり、想定外の税負担が発生しました。
「NISA=非課税という理解が浅く、相続税の仕組みを事前に知っておけば良かった」と振り返っています。
Qさん(45歳・自営業)のケース
Qさんは母親のNISA口座を相続し、課税口座へ移管後にすぐに売却しました。しかし、取得価額が被相続人の購入価格であることを知らず、譲渡益課税で約30万円の税金が発生しました。
「相続時の時価が取得価額だと思い込んでおり、税務の仕組みを正しく理解していなかったことを後悔しています」と語っています。
NISA資産を相続せず現金化を選んだ人の体験談
一方で、NISA資産を相続せず、生前に現金化してもらうことを選んだケースもあります。
それぞれの判断基準を知ることで、自分の状況に合った選択ができます。
Rさん(60歳・会社員)のケース
Rさんは高齢の父親に、NISA資産を生前に売却して現金化することを提案しました。父親は認知症のリスクもあったため、早めに整理しておくことを選択しました。
「相続後の手続きの煩雑さを避けられ、家族全員が安心できる選択だった」と話しています。
Sさん(48歳・主婦)のケース
Sさんは母親のNISA資産を相続する予定でしたが、投資経験がなく管理に不安がありました。そこで、母親に生前に売却してもらい、現金で相続しました。
「投資の知識がない中で資産を引き継ぐより、現金で受け取る方が安心だった」と振り返っています。
家計・老後資金への影響をFP視点で考える
NISAを相続すると、「非課税で有利な資産を失った」と感じる方もいます。
しかし、相続した資産は相続人自身の資産形成にどう組み込むかが重要です。
特に、自分のリスク許容度に合わない商品を惰性で保有することは避けるべきです。
FPとしては、名義変更後に資産配分を再設計し、自分のライフプランに合った運用に見直すことを強く勧めています。相続資産をどう活用するかは、老後資金の準備や家計の安定にも直結するため、専門家への相談も検討しましょう。
FPに聞く!NISA相続に関するリアルな疑問
実際にNISA資産を相続する立場の人が、気になるポイントをFPに質問しました。

30代男性
NISA口座をそのまま引き継ぐことはできますか?
スマホdeほけん
引き継ぐことはできません。相続発生時点でNISA口座は自動的に終了し、資産は課税口座へ移管されます。

30代男性
NISAなら相続税はかからないのですか?
スマホdeほけん
かかります。NISAの非課税メリットは運用益に限られ、相続税評価では通常の金融資産と同じ扱いです。

30代男性
相続人のNISA口座に移すことはできますか?
スマホdeほけん
できません。NISA口座から相続人のNISA口座への直接移管は認められていません。必ず課税口座での受け入れになります。

30代男性
売却せずに保有し続けてもいいですか?
スマホdeほけん
可能です。ただし課税口座での運用になるため、以後の運用益や配当には通常の課税が発生します。

30代男性
生前にできる対策はありますか?
スマホdeほけん
NISAの位置づけを含めた資産全体の設計が重要です。相続だけを目的に使う制度ではなく、生前の運用を支援する制度として活用しましょう。

30代男性
相続後の資産配分はどう考えるべきですか?
スマホdeほけん
被相続人の運用方針ではなく、相続人自身のリスク許容度やライフプランに合わせて再設計することが重要です。専門家への相談もおすすめします。
NISA相続に関するよくある質問
Q1. NISA口座をそのまま引き継げますか?
A. 引き継げません。相続発生時点で口座は終了し、資産は課税口座へ移管されます。
Q2. NISAなら相続税はかかりませんか?
A. かかります。相続税評価では非課税扱いはされず、通常の金融資産と同じです。
Q3. 相続人のNISA口座に移せますか?
A. 移せません。NISA口座間の移管は認められておらず、課税口座での受入れになります。
Q4. 売却せずに保有し続けてもいいですか?
A. 可能です。ただし課税口座での運用になり、以後の運用益や配当には課税されます。
Q5. 生前にできる対策はありますか?
A. NISAの位置づけを含めた資産全体の設計が重要です。相続対策そのものではなく、生前の運用支援制度として活用しましょう。
まとめ
NISA口座の資産は相続できますが、非課税枠は引き継げず、相続時点で口座は終了します。相続税評価は相続開始時の時価で行われ、非課税運用のメリットは相続には引き継がれません。
相続後に売却する場合、被相続人の購入価格を取得価額として引き継ぎ、譲渡益には通常の課税が発生します。NISAは生前の資産形成には非常に有効な制度ですが、相続時には非課税が終了することを前提に整理することで、税務や家計の混乱を防ぐことができます。相続した資産は、相続人自身のリスク許容度やライフプランに合わせて再設計し、専門家への相談も積極的に活用しましょう。
監修者からひとこと

スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
NISA相続の相談では、「非課税で引き継げると思っていた」という声を頻繁に耳にします。FPとして感じるのは、NISAはあくまで「生前の運用を支援する制度」であり、相続対策そのものではないという点です。だからこそ、相続時に慌てないためには、NISAを含めた資産全体の見取り図を事前に整理しておくことが重要です。
特に、取得価額の引き継ぎや譲渡益課税の仕組みは誤解が多く、税務トラブルにつながりやすい部分です。制度の限界を理解したうえで活用し、相続後は相続人自身のライフプランに合わせて資産配分を再設計することが、結果的に家族の安心と資産の最適化につながるでしょう。専門家への相談も含め、早めの準備を心がけてください。