スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
保有資格
AFP・2級FP技能士
専門分野・得意分野
生命保険・社会保障・金融全般に精通。保険業界での実務経験をもとに、ユーザー目線で正確かつ中立的な情報発信を行っています。
住宅ローンの借り換えを考え始めると、「手数料を払ってまで本当に得なのか」「やってもメリットがほとんどないのでは?」と迷ってしまいますよね。
たしかに、金利が下がれば毎月の返済や総返済額は軽くなりますが、返済期間の取り方や住宅ローン控除、団信(団体信用生命保険)の条件次第では、老後資金づくりにマイナスになることもあります。
この記事では、借り換えしてもメリットが出にくい典型パターンと、その見極め方、借り換えが難しいときの代替策まで整理しました。
家計とライフプランを守りながら、後悔しない「借り換えする/しない」の判断ができるよう、一緒にチェックしていきましょう。
住宅ローンの借り換えとは?「得になる仕組み」をまず整理
借り換えとは、今借りている住宅ローンを、他の金融機関や別商品で組み直し、金利や返済条件を見直すことです。
基本的なメリットは、金利引き下げによる利息の削減で、うまくいけば毎月の返済額と総返済額の両方を軽くできます。
一方で、借り換えには事務手数料・保証料・登記費用・司法書士報酬など、数十万円規模の諸費用がかかります。
この諸費用を上回る利息削減効果が出るかどうかが、「借り換えして得か損か」の分岐点になります。
借り換えが「メリットなし」になりやすいケースを先に確認
借り換えの効果は、残高・残期間・金利差・団信や控除の条件など、いくつかの要素の掛け算で決まります。
まずは、メリットが出にくい代表例を押さえ、自分がどこかに当てはまらないか確認しておきましょう。
借り換えでメリットが出にくい主なパターン
1. 残り返済期間が短い
返済期間の残りがあと5年前後と短くなっている場合、削減できる利息の余地がそもそも小さいです。
その結果、数十万円の諸費用の方が重くなり、「金利は下がったのにトータルでは得しなかった」という結果になりやすくなります。
返済が進んだ後半は、毎回の返済額のうち元金の割合が大きく、金利差の影響が出にくいことも理由の一つです。
まずは「残り期間」と「諸費用」をセットで確認するのが出発点です。
2. 金利差が小さい
借り換えでどれだけ得をするかは、「今の金利」と「借り換え後の金利」の差に大きく左右されます。
金利差が0.2%前後しかない場合、利息削減額が伸びず、諸費用の回収に時間がかかりすぎてしまうことがあります。
一般的な目安としては、金利差0.5%以上あるとメリットが出やすいと言われます。
ただし、借入残高が大きい・残期間が長い場合は、0.3%程度でも効果が出るケースもあるため、最終的には具体的な試算が必要です。
3. 団信条件が不利になる
借り換えでは、新しいローンの団体信用生命保険(団信)に入り直すのが一般的です。
このとき、健康状態や年齢の影響で、以前より条件が悪くなったり、疾病保障が外れる・保険料が上がるといったこともあります。
金利だけを見るとお得でも、「万一の保障」が薄くなれば、家族から見ると実質的にはデメリットになることも。
借り換えの検討時は、必ず金利だけでなく「団信の保障内容」と「保険料」を前後で比較しましょう。
4. 住宅ローン控除が継続できない
借り換えによって返済期間が10年未満になるなど、条件から外れてしまうと、住宅ローン控除が適用されない場合があります。
控除がなくなると、利息削減額よりも節税メリットの消失の方が大きくなり、結果として損をしてしまうことも。
控除の残り年数・毎年の還付見込み額を把握し、借り換え後の総返済額と並べて比較することが重要です。
控除の条件は年度ごとに変化するため、最新ルールの確認も忘れないようにしましょう。
5. 審査条件が借入時より悪い
転職したばかり、年収が下がった、自営業になった…など、借入時より属性が悪くなっていると、借り換えの審査で思うような金利優遇が受けられないことがあります。
場合によっては、現在のローンより高い金利しか提示されないケースや、そもそも審査に通らないことも。
勤続年数・年収・他の借入状況など、借入時と比べてどう変わっているかを事前に整理しておきましょう。
不安がある場合は、いきなり申込む前に、専門家に一度相談して方向性を確認しておくと安心です。
注意ポイント
借り換えの損得は「金利差」だけでは判断できません。諸費用・住宅ローン控除・団信の条件まで含めて、トータルで比較することが大切です。
借り換えメリットを最大化するためのチェック視点
メリットが出るかどうかは、感覚ではなく数字をそろえて判断するのがいちばん確実です。
ここでは、借り換えの可否を検討するときに必ず見ておきたいポイントを整理します。
1. 諸費用の総額を先に把握する
借り換えにかかる主な費用は、事務手数料・保証料・登記費用・司法書士報酬・印紙税などです。
これらを合算し、「いくらのコストをかけて」「いくら利息が減るのか」を比較しなければ、正しい判断はできません。
最初に諸費用の総額を出し、その金額を「回収できそうかどうか」を見るのが基本です。
2. 損益分岐点(元が取れる年数)を計算する
諸費用を、借り換えによって年間どれだけ利息が減るかで割ると、「何年で元が取れるか(損益分岐点)」が分かります。
例えば、諸費用が40万円で、利息削減が年間8万円なら、5年でトントンになります。
この損益分岐点より前に売却や転居の予定があるなら、借り換えの優先度は下がります。
3. 固定・変動など金利タイプの見直しもセットで考える
借り換えは、単に金利を下げるだけでなく、「固定金利か変動金利か」を見直すチャンスでもあります。
今後の収入の見通しや、金利上昇リスクへの不安度合いを踏まえ、家計が耐えられる返済額かどうかを軸に金利タイプを選び直すと、長期的な安心感が高まります。
借り換えが難しいときに使える「家計を守る代替策」
試算してみた結果、「今借り換えてもあまりメリットが出ない」という結論になることもあります。
その場合でも、返済負担を軽くする方法はいくつかあります。無理に借り換えにこだわるより、次のような手段を検討してみましょう。
1. 繰上返済で利息を確実に減らす
金利が変わらなくても、元金を早く減らせば支払う利息は確実に減ります。
とくに「期間短縮型」の繰上返済は、支払総利息の削減効果が大きく、家計全体のコスパ改善につながります。
住宅ローン控除との兼ね合いを見ながら、無理のない範囲で計画的に検討しましょう。
2. 今の銀行に金利交渉してみる
他行での借り換えを検討していることを伝えると、金利引き下げや優遇条件の見直しに応じてくれる金融機関もあります。
うまくいけば、諸費用をほとんどかけずに返済額を下げられる可能性があるため、「まずは交渉」が有力な選択肢になることもあります。
3. 返済計画を家計と一緒に見直す
返済が苦しくなっている背景には、教育費の増加や生活費の肥大化など、ローン以外の要因が隠れている場合も多いです。
キャッシュフロー表で将来の支出の山を把握し、「返済をどのペースにすれば家計が安定するか」をあらためて設計し直しましょう。
4. 控除終了後のタイミングで再検討する
住宅ローン控除が残っている間は、借り換えメリットが出にくくても、控除が終わると損益分岐が変わることがあります。
控除終了のタイミングで金利や残高を再チェックし、その時点で改めて借り換えを検討するのも一つの戦略です。
5. 資産運用で老後資金を厚くする
返済ばかりを優先しすぎると、手元資金が減りすぎて老後資金づくりが遅れてしまうリスクがあります。
つみたてNISAやiDeCoに加え、保障と運用を兼ね備えた変額保険などを活用し、住宅ローンと資産形成を両立させるご家庭もあります。
運用にはリスクが伴うため、生活資金とは分けた「余裕資金の範囲」で、長期・分散を前提に取り組むことが大切です。
注意ポイント
「借り換えありき」で考えず、繰上返済・金利交渉・家計見直し・資産運用など、複数のカードを組み合わせることで家計は十分守れます。
借り換え経験者から見える「成功」と「後悔」の分かれ目
借り換えに満足している人は、例外なく「金利差・諸費用・団信・控除」の4点を数字で確認しています。
逆に、後悔している人の多くは、金利の数字だけを見て、手数料や団信・控除の条件を深くチェックしていません。
借り換え成功のカギは、
・総返済額がどれくらい減るか(数字のメリット)
・毎月の返済や将来の家計がどれだけ楽になるか(生活感のメリット)
この2つを両方満たせるかどうかです。
試算して「数字では得でも、生活が不安になる」と感じるなら、借り換えを急がないという判断も立派な選択肢です。
FPに聞く!借り換えの迷いを解消するリアル相談
借り換えは金額も影響期間も大きく、一人で結論を出すには不安が残りやすいテーマです。
ここでは、34歳会社員の女性がFPに聞いたリアルな質問と回答を紹介します。
34歳・女性
借り換えって、どのくらい金利差があればやる価値がありますか?
スマホdeほけん
目安としては0.5%以上あるとメリットが出やすくなります。
ただし、残高や残期間、諸費用によって変わるので、必ず「総返済額ベース」で個別試算してください。
34歳・女性
諸費用が高くて、メリットが消えてしまいそうで心配です。
スマホdeほけん
不安を減らす一番の近道は、「諸費用の総額を先に出すこと」です。
そのうえで、何年で元が取れるか(損益分岐点)を出すと、借り換えの意味があるかどうかがクリアになります。
34歳・女性
団信の条件が変わるのが怖いです。
スマホdeほけん
金利だけで判断せず、「万一のときの保障が増えているか・減っていないか」を必ず確認しましょう。
金利が少し有利でも、保障が薄くなれば家計全体のリスクは高くなります。
34歳・女性
住宅ローン控除が続くかどうか、どうチェックすればいいですか?
スマホdeほけん
借り換え後の返済期間が10年以上あるかどうかが、大きな判定ポイントです。
あわせて、「控除が残る年数」と「年間どれくらい戻ってくるか」を試算し、借り換え後の総返済額と比較すると判断しやすくなります。
34歳・女性
もし借り換えのメリットが小さい場合、どう家計を整えるのが現実的ですか?
スマホdeほけん
繰上返済・金利交渉・固定費削減など、借り換え以外のカードを組み合わせましょう。
教育費や老後資金の計画とセットで見直すと、「返済をどこまで優先すべきか」が見えやすくなります。
住宅ローン借り換えに関するよくある質問
最後に、借り換え検討の現場で特に多い疑問をQ&A形式でまとめます。
判断に迷ったときのチェックリスト代わりに活用してください。
Q1. 借り換えの諸費用はどれくらいを想定しておくべきですか?
A. 借入額や商品によりますが、数十万円規模になるのが一般的です。
事務手数料と登記費用、保証料などを合算し、削減できる利息と必ず見比べて判断しましょう。
Q2. 金利差が0.5%未満でも、借り換えする意味はありますか?
A. 残高が大きく、残期間が長い場合は、0.3%程度の差でもメリットが出ることがあります。
「総返済額」と「諸費用」を入れた試算をしてから、損益分岐点を確認するのが安全です。
Q3. 変動金利から固定金利への借り換えはアリですか?
A. 金利上昇リスクが不安な方にとっては、有力な選択肢です。
固定金利にした場合の返済額で、家計がどれだけ安定するか・耐えられるかをライフプランと合わせて検討しましょう。
Q4. 借り換え審査に落ちたら、もう打つ手はないですか?
A. 収入や他の借入の整理、勤続年数の積み上げなどで条件が改善すれば、時間を置いて再チャレンジすることも可能です。
並行して、今借りている銀行に金利交渉をするのも現実的な対策です。
Q5. 借り換えの「ベストタイミング」はありますか?
A. 一般的には、金利差が開いたとき・残高と残期間がまだ十分あるときが狙い目です。
加えて、住宅ローン控除の節目や、収入・家族構成が変わるタイミングも見直しのきっかけになります。
まとめ:借り換えは条件次第で「メリットなし」にもなる──だからこそ数字で判断を
住宅ローンの借り換えは、金利差・残高・残期間がそろえば、家計を大きく助ける強力な手段です。
一方で、残期間が短い、金利差が小さい、団信や住宅ローン控除の条件が悪化する場合には、諸費用を払ってもメリットがほとんど出ないこともあります。
大切なのは、「なんとなく金利が安いから」ではなく、総返済額・諸費用・家計の余力を数字で確認し、ライフプランと照らして判断することです。
迷うときは専門家によるシミュレーションを活用し、「今借り換える」「今回は見送る」「数年後に再検討する」といった選択肢の中から、自分の家計にとって最も納得できる答えを選びましょう。
監修者からひとこと

スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
住宅ローンの借り換えは、数字だけ見れば「やったほうが得」に見えることが多いテーマです。しかし、諸費用・団信・住宅ローン控除・将来の教育費や老後資金まで含めて見ると、必ずしも全員にとってベストとは限りません。
まずは現在の残高・残期間・金利条件から損益分岐点を出し、家計のキャッシュフローと照らし合わせて「無理のない返済と資産形成を両立できるか」を確認してください。
判断が難しい場合は、住宅ローンと家計の両方に詳しいFPに相談し、数字と生活感の両方で納得できる結論を一緒に探すことをおすすめします。