住宅ローン借り換えの損益分岐点を見極める方法|金利差・残高・期間をプロが徹底ガイド

スマホdeほけん編集部監修者

ファイナンシャルプランナー

保有資格

AFP・2級FP技能士

専門分野・得意分野

生命保険・社会保障・金融全般に精通。保険業界での実務経験をもとに、ユーザー目線で正確かつ中立的な情報発信を行っています。

住宅ローンの借り換えは、毎月の返済額や将来の家計を軽くできる一方で、やり方を間違えると「思ったほど得にならなかった」と感じやすい手続きです。

金利が下がっていると聞くと、すぐに乗り換えたくなりますが、実際には諸費用や住宅ローン控除の影響を踏まえた「損益分岐点」を超えられるかどうかが重要です。本記事では、その損益分岐点の考え方と判断軸を整理し、老後資金まで見据えた賢い借り換えの進め方を解説します。

SBI生命の終身医療保険Neo

\10秒でカンタンに/

保険料シミュレーション

借り換えの損益分岐点とは?まず知っておきたい基本

住宅ローンの借り換えにおける「損益分岐点」とは、借り換えによって減る利息総額と、借り換えにかかる諸費用の金額がちょうど同じになるラインのことです。

このラインを超えられない場合、表面上の金利が下がっても総支払額がほとんど減らず、「手間の割に得をしていない」状態になりかねません。

借り換えでは、新しい金融機関の事務手数料や司法書士報酬、登記費用、印紙税など、数十万円規模の費用が先に発生します。

そのため、「借り換えで減らせる利息額が、諸費用の合計をしっかり上回るか」を具体的な数字で確認することが欠かせません。

シミュレーションで見る損益分岐点|3つの条件と全体像

損益分岐点は「金利差があるかどうか」だけで決まるわけではありません。

残っている借入残高、返済期間の長さ、借り換えに伴う諸費用、住宅ローン控除の残り年数などをまとめて見ることで、初めて「本当に得かどうか」が判断できます。

まず、借り換えを検討する際に必ずチェックしておきたいポイントを一覧で整理します。

それぞれの項目を読みながら、ご自身のローン状況に当てはめてみてください。

1. 金利差は0.5%以上あるか

借り換えの効果を大きく左右するのが「金利差」です。差が小さいと、いくら借り換えても利息削減額が諸費用に飲み込まれてしまいます。

一般的には、金利差が0.5%以上あると、諸費用を回収しやすくなり、総返済額の減少効果も実感しやすくなります。

2. 借入残高は1,000万円以上か

残高が大きいほど、同じ金利差でも削減できる利息総額は膨らみます。

逆に借入残高が1,000万円を下回ってくると、金利差があっても利息削減の余地が小さくなり、諸費用を払ってまで借り換えるメリットが薄くなりがちです。

3. 返済期間は10年以上残っているか

残りの返済期間が長いほど、低い金利のメリットを享受できる期間も長くなります。

目安として、残期間が10年以上あれば、借り換えによる総返済額の削減効果が出やすい一方、残期間が短いと、諸費用を回収する前に完済してしまう場合があります。

4. 諸費用の総額を把握できているか

借り換え費用は、一般に借入残高の2〜3%程度が目安とされますが、金融機関や商品によってかなり差があります。

事務手数料、保証料の有無・精算方法、登記費用、印紙税などを合算し、「借り換え前後の総支払額」で比べることが重要です。

5. 住宅ローン控除が継続できるか

借り換え後も、元のローンの返済のための借り換えであり、借入期間が10年以上などの条件を満たせば、住宅ローン控除を継続できるケースがあります。

ただし、借り換えによって控除期間が延長されることはありません。残り何年控除があるのかを確認し、控除込みでの損益を必ず計算しましょう。

を探す

金利差0.5%以上が効きやすい理由を整理

「金利差が小さくても得なら借り換えたい」と考える方は多いですが、現実には一定以上の差がないと諸費用を回収しづらいのが実情です。

特に2025年は日銀の政策変更の影響で固定金利が動きやすく、変動金利とのギャップや将来の金利見通しも踏まえた判断が求められます。

金利差が0.2〜0.3%程度だと、利息の削減額は出ても「回収までの年数」が長くなり、途中で繰上返済をすると結果的に赤字になることもあります。

一方で、金利差が0.5%以上あれば、諸費用を払っても比較的短期間でトータルの元利支払額が減りやすく、毎月の返済額も目に見えて軽くなるケースが増えます。

注意ポイント

「金利が低いローン」に乗り換えても、手数料が高いと実質負担が増える場合があります。金利の数字だけでなく、必ず諸費用込みの総支払額で比較しましょう。

残高1,000万円以上・残期間10年以上が目安になる背景

借り換えのメリットは、ざっくり言うと「残高 × 金利差 × 残り年数」で決まります。

残高が少ない、または残期間が短いと、そもそも削減できる利息の総額が小さいため、どれだけ金利差があっても諸費用を回収しにくくなります。

残高が十分に大きく、残期間も10年以上ある段階であれば、低金利のメリットが長く利息に反映されるため、借り換え効果が数字として見えやすくなります。

を探す

借り換えで損しないための落とし穴と注意点

ここまでの条件を満たしていても、「見落とし」によって損益分岐点を割り込むことがあります。

実際の相談現場でも、次のポイントを見落として「思ったほど得にならなかった」と感じるケースが少なくありません。

以下は、借り換え前に必ず具体的に確認しておきたい注意点です。

一つでも不安がある場合は、試算条件を見直して再計算するのがおすすめです。

1. 借り換えでも審査が行われる

借り換えはあくまで「新しい住宅ローンの契約」です。

そのため、新規借入と同様に、年収・勤続年数・他のローン状況・信用情報などが再びチェックされます。カードローンや自動車ローンが増えている場合、以前より審査が厳しくなることもあります。

2. 団信の再加入リスクがある

借り換えを行うと、今まで加入していた団体信用生命保険(団信)は終了し、新しい金融機関の団信に加入し直すのが一般的です。

その際の健康状態によっては、告知内容によって条件付きになったり、金利が上乗せになることもあります。保障内容・保険料(または金利上乗せ幅)の変化も含めて比較しましょう。

3. 繰上返済予定で損益が変わる

将来、多めの繰上返済を予定している場合、実際の返済期間が短くなるため「低金利の恩恵を受ける年数」も減ってしまいます。

その結果、借り換えより繰上返済を優先したほうが総支払額の削減につながることもあります。同じ条件で「借り換えのみ」「繰上返済のみ」「両方併用」の3パターンを比べておくと安心です。

4. 控除・税制の影響を見落とさない

住宅ローン控除は、年末残高に一定率をかけた金額が所得税・住民税から控除される仕組みです。

借り換えによって返済額が減る反面、残高の推移や控除適用限度額の影響で、控除額が減る年が出てくると損益分岐点が変わります。控除が残っている年数や控除率(0.7%など)も含めてシミュレーションしましょう。

5. 手続きの手間と時間もコスト

借り換えには、平日の銀行訪問、書類の収集・記入、司法書士との調整など、想像以上に時間と手間がかかります。

削減できる総額が小さいと、「ここまでして乗り換える意味があったのか」と感じることも。金額だけでなく、手間に見合う効果かどうかも含めて判断すると納得感が高まります。

を探す

借り換え先を比較するコツ|実質金利と付帯サービスを見る

借り換え先の検討では、「金利の数字だけ」で選ぶと判断を誤りやすくなります。

諸費用、団信の内容、繰上返済のしやすさやネット手続きの利便性など、トータルの「実質負担」で比較することがポイントです。

特徴 メリット 注意点
ネット銀行の変動金利 表面金利が低く、月々の返済額を下げやすい 事務手数料が残高の○%など定率で高くなるケースがある
大手銀行の固定金利 返済額が一定で、長期の家計管理がしやすい 変動金利より高めの金利になりやすく、金利差が小さいと回収に時間がかかる
団信が手厚いプラン がん・就業不能などの保障が厚く、万一のときの生活防衛につながる 金利上乗せで総支払額が増える場合があり、「保障の質とコスト」のバランス確認が必要

「一番金利が低い銀行」ではなく、「総支払額が最も少なく、かつ家計にとって安心できる条件はどこか」という視点で比較すると、後悔が少なくなります。

将来の金利上昇リスクや、老後資金をどう確保するかも含め、ライフプラン全体で判断することが大切です。

注意ポイント

固定金利と変動金利のどちらが正解かは「その人の家計と働き方次第」です。目先の金利差だけでなく、収入の変動やライフイベントも見据えて選びましょう。

を探す

FP相談で「うちの家計にとっての損益分岐点」を明確に

損益分岐点の計算は、残高・残期間・諸費用・団信・住宅ローン控除など、多くの要素を同時に扱うため、実務では意外と複雑です。

自分でざっくり試算した結果が、前提条件の違いで「実際とは大きくズレていた」ということも珍しくありません。

FPに相談すれば、複数の金融機関・複数の金利タイプを前提にした比較表を作り、家計のキャッシュフローに合わせた返済プランを立ててもらえます。

教育費・老後資金・保険・資産運用まで含めて最適化できるため、「借り換えはしたけれど老後資金が足りなくなった」という事態も避けやすくなります。

FPに聞く!住宅ローン借り換えのリアルな疑問

借り換えを考え始めたときに出やすい疑問を、読者目線で整理しました。

34歳・女性

金利差が0.3%くらいでも、借り換えをする意味はありますか?

スマホdeほけん

金利差が0.3%前後だと、諸費用の回収に時間がかかるケースが多いです。残高・残期間・費用を入れて「何年でトータルいくら得か」を数字で確認し、回収年数が長すぎないかをチェックした上で判断するのが安心です。

34歳・女性

借入残高が900万円ほどですが、1,000万円の目安に届いていないと損でしょうか?

スマホdeほけん

残高が1,000万円未満でも、残期間が長く、借り換え費用が低く抑えられるならメリットが出る場合もあります。目安はあくまで「一般論」なので、実際にはご家庭の条件で損益分岐点を計算することが大切です。

34歳・女性

繰上返済をする予定があると、借り換えは不利になりますか?

スマホdeほけん

繰上返済の予定額が大きいほど、もともとの利息総額が減るので、借り換えによる削減余地も小さくなります。借り換えをせず繰上返済だけした場合と、借り換え+繰上返済の場合を同じ前提で比較してみると違いが見えやすいですよ。

34歳・女性

住宅ローン控除は、借り換えをすると終了してしまうのでしょうか?

スマホdeほけん

条件を満たしていれば、借り換え後も控除を継続できるケースが多いです。ただし、控除期間が延びるわけではなく、残り年数のまま引き継がれます。借り換え前後で控除額も含めた試算をしておきましょう。

34歳・女性

手数料の安い銀行を選べば、必ず得になりますか?

スマホdeほけん

手数料が安いこと自体はプラスですが、金利タイプや団信内容によって、長期の総支払額が逆転することもあります。金利・諸費用・保障をまとめた「実質金利」で比較し、必要ならFPに並べて試算してもらうと判断しやすくなります。

を探す

住宅ローン借り換えのよくある質問

最後に、借り換えの検討時によく出てくる疑問をQ&Aでまとめました。

「本当に今やるべきか?」と迷ったときの確認用として活用してください。

Q1. 借り換えの損益分岐点は自分で計算できますか?

A. 可能ですが、諸費用や住宅ローン控除、団信条件などをすべて織り込むと前提が複雑になります。

前提を少し変えるだけで結果が変わるため、できれば複数パターンでのシミュレーションを行い、余裕を持った判断をするのがおすすめです。

Q2. 借り換えの費用はどれくらい見込めばいいですか?

A. 一般的な目安は、「借入残高の2〜3%程度」です。内訳は、事務手数料、保証料、登記費用、司法書士報酬、印紙税などです。

金融機関による差が大きいため、候補先ごとに見積もりを取り、必ず総額で比較してください。

Q3. 変動金利から固定金利に借り換えるのは損ですか?

A. 金利水準だけを見れば割高に感じるかもしれませんが、「返済額が将来も変わらない安心感」という価値があります。

ライフイベントや収入の見通し次第では、ある程度の金利上乗せを「安心料」として受け入れる選択も合理的です。

Q4. 住宅ローン控除期間中の借り換えで特に注意すべき点は?

A. 「控除が継続できるかどうか」に加えて、「控除期間は延長されない」点が重要です。

控除額が減ると実質的な利息負担が増えるため、借り換え前後での控除込みの損益を必ず再計算しましょう。

Q5. 借り換えは、金利が下がるたびに何度でもしたほうが得ですか?

A. 借り換えのたびに諸費用や手間がかかるため、「何度でもやれば得」というわけではありません。

金利差・残高・残期間の条件がそろっているときに、思い立ったタイミングで試算し、「今回の借り換えでどれくらい改善するのか」を確認してから判断するのが現実的です。

SBI生命の終身医療保険Neo

\10秒でカンタンに/

保険料シミュレーション

まとめ|損益分岐点は「金利差・残高・残期間」で決まり、家計全体で判断する

住宅ローンの借り換えで得をするかどうかは、一般的には「金利差0.5%以上」「借入残高1,000万円以上」「残り返済期間10年以上」が一つの目安になります。

ただし、実際の損益分岐点は、諸費用の金額、団信の条件、住宅ローン控除の残り年数、そして将来の繰上返済予定などによって変わります。

「金利が下がったから」と感覚で動くのではなく、家計に無理のない返済ペースか・老後資金や教育費の準備に悪影響が出ないかまで含めて試算し、必要であれば専門家と一緒に最適なプランを確認してから判断しましょう。

を探す

監修者からひとこと

スマホdeほけん編集部監修者

ファイナンシャルプランナー

住宅ローンの借り換えは、数字だけを見ると「得」に見えても、諸費用や税制の影響を十分に織り込まないと、結果として期待ほど改善しないことがあります。特に2025年前後は金利環境の変化が大きく、固定・変動の選び方や返済期間の設定が、長期の家計安定に与える影響も無視できません。

まずは現在の残高・残期間・金利タイプ・住宅ローン控除の残り年数を整理し、複数の借り換え候補で総支払額と月々の返済を比較してみてください。ご家庭の収支や将来のライフプランに沿った形で判断できれば、「無理なく返せて、老後資金も確保できる」バランスの良い借り換えを実現しやすくなります。