スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
保有資格
AFP・2級FP技能士
専門分野・得意分野
生命保険・社会保障・金融全般に精通。保険業界での実務経験をもとに、ユーザー目線で正確かつ中立的な情報発信を行っています。
「専業主婦だと年金が少なくて、老後にお金が足りないかも…」と不安になる方は少なくありません。夫の収入に頼る期間が長いほど、自分名義の年金額が見えにくく、老後の備えをどう優先すべきか迷ってしまいますよね。
ただし、第3号被保険者の仕組みを正しく理解し、今からできる増やし方をいくつか組み合わせていけば、年金受給額も老後のゆとりも十分に底上げできます。
この記事では、専業主婦の年金が少なくなりがちな理由を整理したうえで、「制度」と「資産形成」の両面から、現実的に年金を増やす方法をわかりやすく解説します。
専業主婦の年金が少なくなりやすい理由と、まず知っておきたい前提
年金を増やす第一歩は、「今どんな仕組みで年金が決まっているのか」を知ることです。専業主婦の場合、多くは自分の年金の土台が「国民年金(老齢基礎年金)」だけになります。
2025年度の老齢基礎年金の満額は月額69,308円、年額にすると約83万円です。夫婦2人で暮らすには不足しやすく、別途の老後資金づくりがほぼ必須といえます。
専業主婦の年金でまず押さえたいポイント
1. 第3号被保険者でも基礎年金は確保できる
会社員や公務員の夫(第2号被保険者)の扶養に入っている専業主婦は、第3号被保険者として国民年金に加入している扱いになります。
この場合、自分で国民年金保険料を支払う必要はありませんが、保険料を納めている人と同じく「納付済み期間」としてカウントされます。
そのため、結婚後ずっと第3号であれば、その期間については老齢基礎年金をしっかり確保できます。ただし、結婚前に未納期間や免除期間が多いと、その分だけ基礎年金は減額されてしまいます。
2. 厚生年金の上乗せがないと受給額が伸びにくい
専業主婦は原則として厚生年金に加入しないため、「老齢厚生年金」の部分がほとんどない、もしくは短期間しかありません。これが、受給総額が少なくなりやすい大きな理由です。
言い換えれば、厚生年金に加入する期間を作る・私的年金で上乗せするといった工夫をすれば、老後の家計はぐっと安定しやすくなります。
注意ポイント
老齢基礎年金が満額に近くても、それだけで生活費すべてを賄うのは難しいのが現実です。まずは「夫婦それぞれの年金見込額」と「老後の毎月の支出」を見える化し、不足額を把握することから始めましょう。
迷わないための結論:専業主婦が年金を増やす5つの方法
年金を増やす方法は、大きく分けて「公的年金の仕組みで増やす」と「自分で資産形成して補う」の2つの方向性があります。
どの方法にもメリット・デメリットがあるため、家計状況や価値観、将来の働き方に合わせて組み合わせるのがポイントです。
ここでは、2025年時点で専業主婦が取りやすい代表的な5つの方法を、イメージしやすいように整理しました。
まずは全体像を確認してから、気になる項目を読み進めてみてください。
1. 任意加入で基礎年金を上積みする
60〜65歳の間は、条件を満たせば国民年金に「任意加入」して保険料を納めることができます。納付期間が足りない場合には、資格期間を確保するために最長70歳まで加入できるケースもあります。
2025年度の国民年金保険料は月額17,510円。例えば5年間任意加入すると、支払う保険料の総額は約105万円です。
負担はあるものの、その分は確実に老齢基礎年金の増額につながるため、「公的年金そのものを底上げしたい人」に向く方法です。
2. 新NISA・iDeCoで老後資金を育てる
公的年金だけでは不足する分を補う王道は、「長期の積立投資」です。
新NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度で、必要に応じて途中で売却・引き出しも可能です。教育資金やリフォーム資金など、老後以外の目的にも柔軟に使えます。
iDeCoは、掛金が所得控除の対象で運用益も非課税という点が魅力ですが、原則60歳まで引き出せません。専業主婦は所得税が少ない(またはかからない)ことが多く、所得控除のメリットが小さいため、まずは新NISAを軸に考えるのがおすすめです。
3. 貯蓄型保険で計画的に積み立てる
養老保険・終身保険・個人年金保険といった貯蓄型保険は、「保険料として半ば強制的に積み立てられる」という点で、コツコツが苦手な人にとって心強い選択肢です。
生命保険料控除の対象となる商品も多く、一定の税制メリットも期待できます。
一方で、途中解約すると元本割れしやすく、インフレが進むと実質的な価値が目減りするリスクもあります。長く続ける前提で、家計に無理がない範囲で選ぶことが大切です。
| 特徴 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 終身保険 | 一生涯の死亡保障と貯蓄性を両立できる | 保険料が高めで、早期解約は損になりやすい |
| 変額保険 | 保障を持ちながら運用益で増額を狙える | 運用次第で元本割れの可能性がある |
| 個人年金保険 | 将来の年金受取を自動で準備できる | 低金利期は返戻率が伸びにくい |
4. パート勤務で厚生年金に加入する
パート勤務であっても、週20時間以上・月収8.8万円以上などの条件を満たすと、従業員51人以上の企業では厚生年金に加入します(対象拡大の動きあり)。
厚生年金の保険料は会社と折半なので、家計負担は実際の保険料の半分です。その分、将来の老齢厚生年金が上乗せされるため、「払った保険料に対して見返りが大きい」仕組みといえます。
短期的には手取りがやや減るものの、長期で見ると老後の年金額アップや、傷病手当金などの保障面でメリットが大きい方法です。
5. 繰り下げ受給で年金額を増やす
老齢年金は、原則65歳からの受給ですが、受給開始を66〜75歳まで遅らせることで、1か月ごとに0.7%ずつ増額されます。
たとえば、70歳まで5年繰り下げると受給額は42%増、75歳まで10年繰り下げれば最大84%増まで引き上げることができます。
一方で、繰り下げ期間中は年金が入ってこないため、その間の生活費を貯蓄や運用で賄えるかどうかが重要です。健康状態・働く予定・家計余力を総合して判断しましょう。
注意ポイント
繰り下げ受給は「長生きリスクに備える強力な手段」ですが、生活資金に余裕がない状態で無理に行うと、老後の前半が窮屈になりかねません。繰り下げを検討する場合は、生活費のシミュレーションもセットで行いましょう。
目的別に選ぶコツ:5つの方法の組み合わせ例
年金を増やす戦略は、「どれか一つだけ」よりも、「複数を少しずつ組み合わせる」ほうが現実的で続けやすいです。
ここでは、よくあるニーズ別に3つの組み合わせパターンを紹介します。
1. 老後資金をまず増やしたい:投資+必要最低限の保険
老後のゆとり資金を増やしたい場合は、新NISAによる積立投資をベースにしながら、医療保険など「必要最低限の保障」だけを保険で確保する形がバランス良くなります。
外貨建て保険や変額保険などを組み合わせる場合は、リスクや手数料、途中解約時の条件を理解したうえで、無理のない金額からスタートしましょう。
2. 年金そのものを増やしたい:パート加入+繰り下げ
「毎月入ってくる年金額そのものを増やしたい」というニーズが強い場合は、パート勤務で厚生年金加入期間を作ることが有効です。
そのうえで、家計と健康に余裕があれば繰り下げ受給も組み合わせると、将来の年金額を大きく底上げできます。
無理のない勤務時間・収入ラインで、長く続けられる働き方を選ぶことが成功のポイントです。
3. 納付不足が気になる:任意加入で土台を強化
若い頃の未納期間や免除期間が長く、「このままだと基礎年金がかなり少ない」と分かっている場合は、任意加入で土台を補強することが優先度の高い対策になります。
保険料の負担が重く感じるときは、前納割引の活用や、家計の固定費見直しで捻出するなど、段階的に取り組むと無理がありません。
専業主婦が年金を増やすときの3つの注意点
ここまで紹介した方法は、いずれも「やれば増える」可能性がありますが、家計や健康状態によっては逆効果になることもあります。
特に大切なのは、夫婦での共有・家計の余力・健康リスクの3つです。
次の注意点をチェックしながら、自分たちに合ったペースで進めていきましょう。
年金増額で失敗しないための注意点
1. 夫婦で老後資金の全体設計を共有する
老後資金は、片方の年金だけを見ても意味がありません。夫婦の年金・退職金・預貯金など、世帯全体でいくら必要かをまず決めることが大事です。
ねんきん定期便やねんきんネットを活用し、将来の受給見込額を確認しながら、「いつ・いくら不足しそうか」を夫婦で共有しましょう。
2. 固定費を減らし「余力」を作ってから始める
老後のためとはいえ、今の生活を削りすぎるとストレスがたまり、長続きしません。まずは保険料・通信費・サブスクなどの固定費を見直し、毎月の「余力」を増やすことから始めましょう。
削減できた固定費を、そのまま自動積立や新NISAの積立に回すと、無理なく老後資金づくりが進みます。
3. 健康・寿命リスクを前提に戦略を立てる
繰り下げ受給や長期投資の効果は、「どれくらい元気に長く暮らせるか」で変わります。平均寿命だけでなく、自分や家族の健康状態・家族歴も考慮しましょう。
「長生きリスク」に備えるなら繰り下げや長期運用が有利になりますが、健康に不安があるなら早めの受給や現金の厚め確保を優先する選択が合理的な場合もあります。
4. 投資のリスク許容度をあらかじめ決めておく
新NISAや変額保険を活用する場合、「どれくらいの値動きなら我慢できるか」を最初に決めておくことが大切です。
生活費を削ってまで投資額を増やすと、相場の下落時に不安が大きくなり、途中でやめてしまいやすくなります。まずは生活防衛資金を確保し、そのうえで余裕資金の範囲で積立を始めましょう。
5. 専門家相談で制度の抜け漏れを防ぐ
任意加入の可否や、厚生年金への加入条件、繰り下げ開始年齢の最適解などは、家庭ごとに答えが異なります。
自分だけで判断すると、「実はもっと良い選択肢があった」「制度の使い漏れがあった」というケースも少なくありません。FPに相談すれば、年金・家計・資産形成をまとめてチェックしてもらえるので、最短ルートで不安を小さくしやすくなります。
FPに聞く!専業主婦の年金と家計のリアルな疑問
ここからは、専業主婦の方からよく聞かれる質問を、インタビュー形式でまとめました。自分に近いケースがないか、チェックしながら読んでみてください。
34歳・女性
専業主婦の基礎年金は、結婚後ずっと扶養なら満額になるんですか?
スマホdeほけん
第3号被保険者として継続していれば、その期間分はきちんとカウントされるので、満額に近づきます。
ただし、結婚前の未納や免除期間があると減額されるので、ねんきん定期便などで納付状況を一度確認しておくと安心です。
34歳・女性
新NISAとiDeCo、専業主婦ならどちらを優先すべきでしょう?
スマホdeほけん
所得控除のメリットが小さいことが多いので、まずは使い勝手の良い新NISAを優先するのがおすすめです。
家計に無理のない金額で長期の積立をスタートし、余力があればiDeCoや保険も検討すると良いでしょう。
34歳・女性
パートで厚生年金に入ると、手取りが減るのが心配です。
スマホdeほけん
たしかに短期的には手取りが減りますが、保険料を会社が半分負担してくれる分、将来の年金増額効果は大きくなります。
老後の年金と医療・介護の保障をトータルで見ると、メリットが上回るケースが多いですね。
34歳・女性
繰り下げ受給って、健康に不安がある場合は避けたほうがいいですか?
スマホdeほけん
繰り下げは「長く受け取るほど有利」な仕組みなので、健康状態や生活資金の余裕を踏まえて判断する必要があります。
生活費がギリギリなら65歳からの受給を基本にし、余裕がある場合は66歳以降の繰り下げも選択肢に入れると良いでしょう。
34歳・女性
貯蓄型保険や変額保険は、老後資金づくりに向いていますか?
スマホdeほけん
強制的に積み立てられる点は老後資金づくりと相性が良いですが、利回り・手数料・解約条件・運用リスクなどをきちんと確認することが前提です。
新NISAなど他の手段とも比較しながら、目的に合う商品を選ぶことが大切ですね。
専業主婦の年金についてよくある質問
最後に、専業主婦の年金に関する代表的な疑問をQ&A形式でまとめます。誤解しやすいポイントだけでも押さえておきましょう。
Q1. 専業主婦の年金はいくらもらえるの?
A. 2025年度の老齢基礎年金の満額は月額69,308円、年額にすると約83万円です。未納や免除期間があると、その分減額されます。
結婚前に厚生年金に加入していた期間があれば、その分の老齢厚生年金が上乗せされます。正確な見込額を知るには、ねんきん定期便やねんきんネットで確認しましょう。
Q2. 夫が先に亡くなった場合、年金はどうなる?
A. 夫が厚生年金に加入していた場合、妻は「遺族厚生年金」を受け取れる可能性があります。自分の老齢基礎年金に上乗せされますが、現役時代の収入よりは下がるのが一般的です。
子どもが18歳到達年度末までであれば「遺族基礎年金」の対象になる場合もあります。遺族年金だけで生活費が足りるかを事前に試算し、不足分を貯蓄や保険で補う準備をしておきましょう。
Q3. 専業主婦の年金にも税金や社会保険料が引かれる?
A. 基礎年金のみであれば、多くの場合は所得税・住民税の課税ラインに届かず、税金がかからないケースがほとんどです。ただし、他の収入との合計で判断されます。
一方、65歳以降は介護保険料や国民健康保険料などが年金から天引きされることがあります。手取りベースで老後資金を考えるためにも、天引き分も含めた試算をしておくと安心です。
Q4. NISAで利益が出ると扶養から外れるの?
A. NISAで得た運用益は「非課税」で、税金の計算上の所得には含まれません。そのため、税法上の扶養判定には影響しません。
ただし、社会保険の扶養判定は「今後1年間の見込み収入(給与など)」を基準にするため、パートなどで働き方を変える場合は、加入している健康保険組合の基準も確認しておくと安心です。
Q5. 年金を増やす行動はいつ始めるべき?
A. 老後資金づくりは、早く始めるほど少ない負担で済みます。積立投資は期間が長いほど複利効果が働き、任意加入やパート加入も年齢が若いほど選択肢が広がります。
「余裕ができてから」ではなく、「少額でも今から」がコツです。月数千円からでも、長い目で見れば大きな差になります。
まとめ|専業主婦の年金は「制度×資産形成」の組み合わせで増やせる
専業主婦の年金は、どうしても老齢基礎年金中心になり、満額でも夫婦の生活費を賄うには不足しがちです。
しかし、任意加入やパート勤務による厚生年金加入、繰り下げ受給といった「制度面での上乗せ」と、新NISAなどを活用した「資産形成による上乗せ」を組み合わせれば、受給額と老後のゆとりの両方をしっかり高めることができます。
大切なのは、夫婦で老後資金の全体像を共有し、家計に無理のない方法を小さく早く始めて、コツコツ続けることです。迷ったときはFPに相談し、制度の使い漏れを防ぎながら、自分たちに合った戦略で老後の安心を育てていきましょう。
監修者からひとこと

スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
専業主婦の年金対策は、「年金制度だけでなんとかしよう」と考えると行き詰まりやすくなります。まずは基礎年金の見込額と夫婦の生活費を数字で確認し、「世帯として老後にいくら不足しそうか」を具体的にすることが出発点です。
資産形成では新NISAを中心に長期・分散で積み立て、必要な保障は医療保険や就業不能保険、死亡保障などで補うと、リスクと安心のバランスが取りやすくなります。
パート加入・任意加入・繰り下げ受給などの使い方は、家計・健康・働き方で最適解が変わるため、「誰かの正解」をそのまま真似するのではなく、専門家と一緒にシミュレーションしながら、ご家庭に合うプランを作ることをおすすめします。