スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
保有資格
AFP・2級FP技能士
専門分野・得意分野
生命保険・社会保障・金融全般に精通。保険業界での実務経験をもとに、ユーザー目線で正確かつ中立的な情報発信を行っています。
がん保険の診断一時金や入院給付金を受け取った年は、医療費控除をどう計算するかで納税額が変わります。仕組みを正しく理解できていないと、申告漏れや差し引きミスが起きやすいのが実情です。
本記事では、診断一時金は差し引き不要という重要ポイントから、年収200万円以上・未満の計算式、非課税となる給付金の扱い、うっかりミスの対処までをわかりやすく解説します。
結論と全体像|診断一時金は原則「差し引き不要」
がん診断給付金(診断一時金)は、医療費控除の計算で医療費から差し引く必要はありません。一方で、入院・手術・通院給付金など治療費を補填する性質の給付は差し引き対象です。
まずは「差し引く/差し引かない」の線引きを把握し、次に収入水準別の控除式へ落とし込みましょう。ここを押さえれば迷いません。
1. 診断一時金は差し引かない
初回診断時に受け取るがん診断給付金は、医療費控除の差し引き対象から外れます。医療費と直接の相殺関係にないためです。
一方で確定申告書作成時には、受領事実の管理を行い、他の給付と混同しないよう項目の切り分けが必要です。
2. 入院・手術給付は差し引く
入院給付金・手術給付金・通院給付金など、治療費の補填として受けた給付は医療費から差し引きます。社会保険の高額療養費等も同様です。
補填額の控えを残し、医療費控除の明細書に連動させると計算ミスを防げます。
3. 収入200万円以上の控除式
収入(正確には所得)が200万円以上の人は「医療費-補填額-10万円」。この10万円が最低控除ラインとなります。
複数人の医療費を合算し、代表者の確定申告で適用するのが効率的です。
4. 収入200万円未満の控除式
所得200万円未満は「医療費-補填額-所得の5%」。10万円ではなく5%が基準なので、低所得ほど控除のハードルが下がります。
所得見込みを年内に試算し、有利な調整(家族合算・支払い時期の最適化)を行いましょう。
5. 高額療養費など公的払い戻し
健康保険の高額療養費や出産育児一時金等の公的払い戻しは、医療費から差し引きます。後日支給が多いため、年度またぎの整合に注意です。
支給通知書は、明細書と一緒にファイリングしておくと安心です。
注意ポイント
差し引き対象か迷った支出は「治療費の補填かどうか」で判断します。迷ったら備考メモを残し、明細書の注記欄に根拠を記録しましょう。
ケースで学ぶ|診断一時金100万円・入院給付50万円
以下は「医療費100万円、診断一時金100万円、入院給付金50万円」を受けたケースの試算です。家族4人の想定で、差し引き対象は入院給付金のみとします。
収入(正確には所得)200万円を境に計算式が変わるため、双方のパターンを確認しましょう。
1. 所得200万円以上の計算
式:医療費100万円-補填50万円-10万円=40万円。診断一時金は差し引き不要です。
控除後の課税所得に税率を掛けるため、住民税も含めた負担減を見積もると家計インパクトが把握できます。
2. 所得200万円未満の計算
式:医療費100万円-補填50万円-所得の5%。所得150万円なら7.5万円を控除基準として、結果は42.5万円となります。
所得水準に応じて基準額が変動するため、年末の所得見込みを必ず確認しましょう。
3. 重要な留意点
診断一時金は非課税であり、確定申告の課税所得には原則含まれませんが、医療費控除の差し引き対象でもありません。
一方で高額療養費など公的給付は差し引き対象です。「民間給付=差し引き不要」ではない点に注意が必要です。
4. 家族合算のコツ
同一生計なら家族の医療費を合算して代表者が申告可能です。合算で10万円(または5%)を超えれば控除対象になります。
レシートは月次で集約し、補填額との突合をルール化すると入力作業が短縮できます。
5. よくある計上ミス
診断一時金まで差し引いてしまう、ドラッグストア購入の治療薬を未計上、高額療養費の差し引き忘れなどが典型です。
申告前チェックリストで対象/対象外の棚卸しを行い、エビデンスを保存してください。
実務ポイント
医療費のお知らせ・保険会社の支払通知・領収書を月次でクリップ化し、年末にまとめてスキャン保管すると明細作成がスムーズです。
非課税になる主な給付金と取り扱い
がん保険の給付金は多くが非課税ですが、医療費控除における「差し引き対象」かは性質で異なります。代表例を整理します。
制度の趣旨を理解し、誤計上を防ぎましょう。
| 特徴 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 診断一時金 | 非課税・差し引き不要 | 他給付と混在させず記録 |
| 入院・手術給付金 | 非課税 | 医療費から差し引き必須 |
| 高額療養費 | 自己負担を軽減 | 差し引き対象・後日支給に注意 |
医療費控除の基礎|対象・対象外の代表例
「治療・療養に直接必要」な支出が中心です。予防や美容は対象外が原則となります。迷いやすい項目を示します。
通院交通費は公共交通機関が基本で、自家用車のガソリン代・駐車場代は対象外と覚えておきましょう。
がん保険と家計設計|備えと資産形成のバランス
治療費カバーは保険、長期の資産づくりは運用で分担するのが基本です。家計に無理のない保険料で保障と貯蓄の両立を図りましょう。
資産形成の文脈では、変額保険など運用一体型の商品も選択肢です。保障とリスクのバランス、コストを理解したうえで加入可否を検討してください。
インタビュー|FPに聞く医療費控除の落とし穴

医療費控除と給付金の取り扱いは、細かいルールの理解がカギです。現場で多い質問をQ&A形式で伺いました。
34歳・女性
診断一時金は本当に差し引かなくていいのですか?
スマホdeほけん
はい。診断一時金は治療費補填ではなく、医療費控除の差し引き対象外です。入院や手術などの補填給付と必ず分けて記録しましょう。
34歳・女性
高額療養費はいつ差し引けば良いですか?
スマホdeほけん
支給の有無に関わらず、その年の医療費から差し引きます。翌年受給でも、対象年の医療費から控除する扱いで整合を取ります。
34歳・女性
家族の医療費は誰が申告すると有利ですか?
スマホdeほけん
同一生計なら合算して代表者が申告可能です。税率が高い人が申告すると軽減効果が相対的に大きくなる場合があります。
34歳・女性
ドラッグストア購入の医薬品は計上できますか?
スマホdeほけん
治療・療養目的なら対象です。日用品とレシートが混在しやすいので、就業不能保険など保険の見直しと併せて家計簿アプリで仕分けを徹底しましょう。
34歳・女性
申告漏れが心配です。対策は?
スマホdeほけん
医療費のお知らせ・保険給付通知・領収書を月次で突合します。チェックリスト化し、提出前に第三者(家族やFP)でダブルチェックすると安心です。
よくある質問Q&A(5問)

Q1. 診断一時金は課税されますか?
A. 原則非課税です。所得税の課税対象ではありません。医療費控除の差し引き対象にも含めません。
Q2. 申告で診断一時金を差し引いたらどうなる?
A. 控除額が過少になり損をします。気づいた時点で更正の請求や訂正・修正申告で是正しましょう。手続きは早いほど有利です。
Q3. 交通費はどこまで計上できますか?
A. 公共交通機関の実費は対象です。やむを得ないタクシー利用も条件付きで認められます。自家用車のガソリン・駐車場代は対象外です。
Q4. セルフメディケーション税制と併用できますか?
A. 同一年での併用はできません。医療費控除とどちらが有利か、年末に試算して片方を選択してください。
Q5. 変額保険で資産形成も考えるべき?
A. 保険は保障、資産形成は運用が基本ですが、変額保険は両機能を併せ持ちます。リスク・手数料・保険本来の目的を理解したうえで選択しましょう。
まとめ
がん保険の診断一時金は医療費控除の差し引き対象外、入院・手術給付は差し引き対象という線引きが最重要です。所得200万円以上は10万円、未満は所得の5%が基準となり、家族合算と補填額の突合でミスを防げます。
非課税の給付金でも取り扱いは様々です。記録を整え、必要に応じて専門家に相談しながら、家計に最適な申告を行いましょう。
監修者からひとこと



スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
医療費控除は「差し引くべき補填額の特定」と「所得水準別の式」の二段構えで考えると迷いません。診断一時金は差し引かず、入院・手術給付や高額療養費は差し引く——この原則をまず固定化しましょう。家族合算や明細書の作り方で結果が変わるため、月次管理と年末の総点検を習慣化すると実務の負担が一気に減ります。保険は保障と家計耐性のバランスが要であり、資産形成を含む設計では変額保険などのリスク・コストも踏まえて選択することが肝要です。