スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
保有資格
AFP・2級FP技能士
専門分野・得意分野
生命保険・社会保障・金融全般に精通。保険業界での実務経験をもとに、ユーザー目線で正確かつ中立的な情報発信を行っています。
出産時に吸引分娩が必要になった場合、医療費や保険給付金について不安を感じる方は多いでしょう。厚生労働省の統計によると、全分娩のうち約5%から8%が吸引分娩となっており、決して珍しい処置ではありません。
この記事では、吸引分娩における健康保険の適用範囲、民間の医療保険や女性保険からの給付金について、ファイナンシャルプランナーの視点から詳しく解説します。吸引分娩にかかる費用、保険請求の手続き方法、そして妊娠前に準備しておくべき保険の選び方まで、妊娠・出産に備えるための実践的な知識を得ることができます。
この記事を読んでわかること
-
吸引分娩の健康保険適用範囲と実際の自己負担額(3割負担で約6,000円~9,000円)
-
医療保険・女性保険から給付金を受け取れる条件と請求に必要な書類
-
妊娠前に加入すべき保険の選び方と加入後の給付制限期間
吸引分娩とは?どんなときに行われる処置か
吸引分娩は、赤ちゃんの頭に吸引カップを装着し、陰圧をかけて引き出す医療処置です。分娩が長引いて母体や赤ちゃんに負担がかかる場合、赤ちゃんの心拍が低下した場合、母体が疲労して十分ないきめなくなった場合などに実施されます。
産科医が医学的な判断に基づいて行う処置であり、保険診療として認められている医療行為です。通常の経腟分娩では保険適用外ですが、吸引分娩は異常分娩として扱われるため、健康保険の対象となります。
吸引分娩は健康保険が適用される?自己負担額はいくら
吸引分娩は異常分娩に分類されるため、健康保険が適用されます。通常の正常分娩は保険適用外で全額自己負担となりますが、吸引分娩を含む異常分娩は医療行為として3割負担となります。
ただし、出産育児一時金(2023年4月以降は50万円)は正常分娩でも受け取れるため、吸引分娩の場合は健康保険による3割負担と出産育児一時金の両方を活用できます。
1. 健康保険が適用される範囲と条件
健康保険が適用されるのは、医師が医学的に必要と判断した吸引分娩の処置費用です。具体的には、吸引器具の使用料、処置を行う医師の技術料、処置に伴う薬剤費などが保険診療の対象となります。
一方、個室の差額ベッド代、特別な食事代、テレビカードなどは保険適用外となり、全額自己負担です。
2. 吸引分娩の医療費と3割負担額
吸引分娩の処置費用は、診療報酬点数で2,000点から3,000点程度(医療機関により異なる)とされています。1点=10円なので、総額2万円から3万円程度となり、3割負担で約6,000円から9,000円が自己負担額の目安です。
ただし、これは吸引分娩の処置そのものの費用であり、入院費や分娩費は別途かかります。
3. 出産育児一時金との併用方法
出産育児一時金は、健康保険から支給される50万円の給付金で、正常分娩でも異常分娩でも受け取れます。吸引分娩の場合は、この一時金に加えて、吸引分娩の処置費用が3割負担となるため、経済的な負担は正常分娩よりも軽くなるケースもあります。
多くの医療機関では、直接支払制度により一時金が病院に直接支払われるため、窓口での支払い負担が軽減されます。
4. 高額療養費制度は使えるのか
吸引分娩の処置費用は比較的少額のため、通常は高額療養費制度の対象となる金額(月額の自己負担限度額を超える医療費)には達しません。しかし、帝王切開や長期入院を伴う場合は、月額の医療費が高額になり、高額療養費制度の対象となる可能性があります。
年収約370万円から770万円の方の場合、自己負担限度額は月額約80,100円となるため、これを超える部分は払い戻しを受けられます。
5. 実際の総費用シミュレーション
吸引分娩を含む出産の総費用をシミュレーションしてみましょう。分娩費・入院費が合計60万円、吸引分娩処置費が3万円(3割負担で9,000円)の場合、総額は約60.9万円です。ここから出産育児一時金50万円を差し引くと、自己負担額は約10.9万円となります。
正常分娩で60万円全額自己負担(一時金差し引き後10万円)と比較すると、吸引分娩でも負担額に大きな差はないことがわかります。
医療保険・女性保険から給付金は受け取れる?条件と金額
吸引分娩は異常分娩として扱われるため、民間の医療保険や女性保険の給付対象となるケースが多くあります。ただし、保険会社や商品によって給付条件が異なるため、加入している保険の約款を確認することが重要です。
ここでは、吸引分娩で給付金を受け取るための具体的な条件と請求方法について解説します。
注意ポイント
妊娠発覚後に医療保険や女性保険に加入した場合、多くの保険会社では妊娠・出産に関する給付が制限されます。妊娠前の加入が重要です。
1. 吸引分娩が給付対象になる条件
医療保険や女性保険で吸引分娩が給付対象となるのは、手術給付金の対象として「異常分娩の処置」が含まれている場合です。多くの保険会社では、吸引分娩は「娩出術」として手術給付金の対象となります。
ただし、妊娠前に加入していること、告知義務を正しく履行していることが前提条件となります。また、保険会社によっては特定の部位や処置を不担保とする条件が付いている場合もあるため、約款の確認が必要です。
2. 手術給付金と入院給付金の違い
吸引分娩の場合、手術給付金が支給されるのが一般的です。手術給付金は、入院給付金日額の10倍、20倍、40倍など、保険商品によって倍率が設定されています。例えば、入院給付金日額5,000円で手術給付金倍率20倍の場合、10万円が支給されます。
入院給付金は、出産のための入院日数に応じて支給されます。6日間入院した場合、日額5,000円なら3万円となります。
3. 女性保険の上乗せ給付の仕組み
女性保険では、女性特有の病気や出産に関する保障が手厚く設定されています。吸引分娩を含む異常分娩の場合、通常の医療保険よりも高額な給付金が受け取れるケースがあります。
例えば、女性疾病特約が付いている場合、手術給付金が1.5倍や2倍になる商品もあります。妊娠・出産を控えている方は、女性保険への加入を検討する価値があります。
4. 給付金請求に必要な書類と手続き
吸引分娩で保険金を請求する場合、保険会社所定の給付金請求書、医師の診断書、入院証明書などが必要です。診断書には、吸引分娩を実施した日付、処置の内容、診療点数などが記載されている必要があります。
診断書の発行には数千円の費用がかかるため、給付金額と診断書費用を比較して請求を検討しましょう。給付金が少額の場合、診断書費用の方が高くなることもあります。
5. 実際に受け取れる給付金の目安額
標準的な医療保険(入院給付金日額5,000円、手術給付金倍率20倍)に加入している場合、吸引分娩で受け取れる給付金は以下の通りです。手術給付金10万円、入院給付金(6日間)3万円で、合計13万円となります。
女性保険に加入している場合は、さらに上乗せ給付があり、15万円から20万円程度受け取れるケースもあります。出産費用の自己負担をカバーできる金額と言えるでしょう。
妊娠前に加入すべき保険の選び方と注意点
吸引分娩を含む異常分娩に備えるためには、妊娠前に保険に加入しておくことが重要です。妊娠発覚後の加入では、出産に関する給付が制限されるケースがほとんどです。
ここでは、妊娠・出産に備えるための保険選びのポイントと、加入時の注意点について解説します。
FPからのアドバイス
結婚や妊娠を予定している方は、できるだけ早めに医療保険や女性保険に加入することをおすすめします。妊娠後は加入が難しくなるだけでなく、給付制限期間があるためです。
1. 医療保険と女性保険の違いと選び方
医療保険は、病気やケガ全般をカバーする保険で、吸引分娩や帝王切開などの異常分娩も給付対象となります。一方、女性保険は、女性特有の病気や出産に関する保障が手厚く設計されており、給付金額が高めに設定されています。
妊娠・出産を控えている方は、女性保険または医療保険に女性疾病特約を付加することで、より充実した保障を得られます。
2. 妊娠後の加入制限と給付条件
妊娠が判明した後に保険に加入する場合、多くの保険会社では「特定部位不担保」という条件が付きます。これは、子宮や卵巣など妊娠・出産に関連する部位の病気や処置について、一定期間給付金が支払われない条件です。
不担保期間は通常1年から2年程度で、その期間中に発生した異常分娩は給付対象外となるため、妊娠前の加入が絶対に有利です。
3. 帝王切開や切迫早産にも対応する保障
吸引分娩だけでなく、帝王切開や切迫早産による入院など、妊娠・出産には様々なリスクがあります。これらすべてに対応できる保険を選ぶことが重要です。特に帝王切開は入院日数が長くなるため、入院給付金の支払日数上限も確認しておきましょう。
60日型や120日型など、商品によって支払日数の上限が異なります。切迫早産で長期入院する場合を考慮すると、120日型以上が安心です。
4. 保険料と保障内容のバランス
女性保険は保障が手厚い分、保険料も高めに設定されています。20代女性の場合、医療保険は月額2,000円から3,000円程度ですが、女性保険は月額3,000円から5,000円程度が相場です。
家計に無理のない範囲で、必要な保障を選ぶことが大切です。まずは基本的な医療保険に加入し、予算に余裕があれば女性疾病特約を追加する方法もあります。
5. 加入後の待機期間と給付開始時期
一部の保険商品には、加入後一定期間(90日や180日など)は給付金が支払われない「待機期間」が設定されています。特にがん保険には90日の待機期間がありますが、医療保険や女性保険でも商品によっては待機期間があるため注意が必要です。
妊娠を計画している方は、待機期間を考慮して早めに加入することをおすすめします。
| 加入時期 | 給付条件 | おすすめ度 |
|---|---|---|
| 妊娠前 | 制限なし・全額給付 | ★★★ |
| 妊娠初期 | 部位不担保の可能性 | ★★☆ |
| 妊娠中期以降 | 加入困難または給付制限 | ★☆☆ |
吸引分娩の保険請求手続きと注意点
実際に吸引分娩となった場合、保険金を請求する手続きについて理解しておくことが重要です。適切な書類を揃え、スムーズに請求することで、出産後の経済的負担を早期に軽減できます。
ここでは、保険金請求の具体的な流れと、請求時の注意点について解説します。
保険金請求の基本的な流れ
吸引分娩で保険金を請求する場合、まず保険会社に連絡して請求書類を取り寄せます。次に、医療機関で診断書や入院証明書を発行してもらい、必要書類を揃えて保険会社に提出します。
書類に不備がなければ、通常5営業日から10営業日程度で給付金が指定口座に振り込まれます。退院後できるだけ早く手続きを始めることで、給付金を早期に受け取れます。
診断書の記載内容で注意すべきポイント
診断書には、吸引分娩の実施日、処置内容、診療点数、入院期間などが正確に記載されている必要があります。特に「吸引娩出術」という名称が明記されていることが重要です。
医師に診断書を依頼する際は、「保険請求用の診断書」であることを明確に伝え、保険会社が求める項目がすべて記載されるよう確認しましょう。
複数の保険に加入している場合の請求方法
医療保険と女性保険の両方に加入している場合、両方から給付金を受け取れる可能性があります。この場合、それぞれの保険会社に個別に請求する必要があります。
ただし、診断書は複数枚必要になるため、発行費用がかさむ点に注意が必要です。診断書のコピーで対応できる保険会社もあるため、事前に確認することをおすすめします。
実際の体験談|吸引分娩で保険給付を受けたケース
実際に吸引分娩を経験し、保険給付を受けた方々の体験談を紹介します。それぞれのケースから、保険加入のタイミングや給付金の活用方法について学ぶことができます。
体験談1:30代女性・妊娠前に女性保険に加入していたケース
Aさん(32歳・会社員)は、結婚を機に女性保険に加入していました。第一子の出産時、分娩が長引き吸引分娩となりました。入院は6日間で、手術給付金15万円と入院給付金3万円、合計18万円を受け取りました。
出産費用の自己負担は約12万円だったため、保険給付金で十分にカバーでき、むしろプラスになりました。Aさんは「妊娠前に加入していて本当に良かった」と振り返っています。
体験談2:20代女性・妊娠後に医療保険に加入し給付制限を受けたケース
Bさん(28歳・パート)は、妊娠が判明してから医療保険に加入しました。吸引分娩となりましたが、加入時に「子宮部位不担保1年」という条件が付いていたため、給付金を受け取ることができませんでした。
Bさんは「もっと早く保険のことを知っていればよかった」と語り、妊娠を考えている友人には早めの加入を勧めているそうです。
体験談3:30代女性・医療保険と女性保険のダブル給付を受けたケース
Cさん(35歳・自営業)は、医療保険と女性保険の両方に加入していました。第二子の出産時に吸引分娩となり、医療保険から12万円、女性保険から20万円、合計32万円の給付金を受け取りました。
自営業で産休がなく収入が途絶える中、保険給付金が生活費の大きな支えになったと話しています。
吸引分娩と保険に関するよくある質問
Q1. 吸引分娩は健康保険が使えますか?
A. はい、吸引分娩は異常分娩として健康保険の適用対象です。処置費用は3割負担となり、約6,000円から9,000円程度が自己負担額の目安です。出産育児一時金50万円も受け取れるため、経済的な負担は正常分娩とほぼ変わりません。
Q2. 医療保険から給付金は出ますか?
A. はい、多くの医療保険では吸引分娩が手術給付金の対象となります。ただし、妊娠前に加入していることが前提です。妊娠後の加入では部位不担保などの条件が付き、給付が受けられない可能性が高いため注意が必要です。
Q3. 女性保険と医療保険、どちらが有利ですか?
A. 女性保険の方が出産関連の給付が手厚い傾向にありますが、保険料も高めです。予算に余裕がある方は女性保険、コストを抑えたい方は医療保険に女性疾病特約を付加する方法がおすすめです。
Q4. 妊娠中でも加入できる保険はありますか?
A. 妊娠中でも加入できる保険商品はありますが、多くの場合「特定部位不担保」という条件が付きます。今回の妊娠・出産に関する給付は受けられない可能性が高いため、次回の妊娠に備える目的での加入となります。
Q5. 給付金請求に必要な書類は何ですか?
A. 保険会社所定の給付金請求書、医師の診断書、入院証明書などが必要です。診断書には吸引分娩の実施日、処置内容、診療点数が記載されている必要があります。診断書の発行費用は数千円かかるため、給付金額とのバランスを確認しましょう。
FPに聞く!吸引分娩と保険に関するリアルな疑問
吸引分娩の可能性や保険について不安を感じている方が、実際にFPに質問した内容をまとめました。

30代女性
吸引分娩になった場合、費用はどれくらいかかりますか?
スマホdeほけん
健康保険が適用されるため、処置費用の自己負担は約6,000円から9,000円です。出産育児一時金50万円も受け取れるため、正常分娩とほぼ同じ負担額となります。

30代女性
医療保険から給付金は受け取れますか?
スマホdeほけん
妊娠前に加入していれば、手術給付金と入院給付金を受け取れるケースが多いです。入院給付金日額5,000円の保険なら、10万円から15万円程度の給付が一般的です。

30代女性
妊娠してから保険に入っても間に合いますか?
スマホdeほけん
妊娠後の加入では「特定部位不担保」という条件が付き、今回の出産に関する給付が受けられない可能性が高いです。妊娠を計画している段階で加入することを強くおすすめします。

30代女性
女性保険は必要ですか?医療保険だけでは不十分ですか?
スマホdeほけん
医療保険でも吸引分娩や帝王切開はカバーされますが、女性保険の方が給付金額が高めです。予算に応じて、医療保険に女性疾病特約を付加する方法も検討できます。

30代女性
帝王切開の可能性もあるのですが、同じ保険で対応できますか?
スマホdeほけん
はい、医療保険や女性保険では、吸引分娩だけでなく帝王切開、切迫早産など異常分娩全般がカバーされます。幅広い出産リスクに備えられます。

30代女性
給付金の請求はいつまでにすればいいですか?
スマホdeほけん
保険会社によって請求期限は異なりますが、通常は事由発生日(出産日)から3年以内です。ただし、早めに請求した方がスムーズに給付を受けられるため、退院後すぐに手続きを始めることをおすすめします。

30代女性
保険料の負担が心配です。月額どれくらいが目安ですか?
スマホdeほけん
20代から30代女性の場合、医療保険は月額2,000円から3,000円、女性保険は月額3,000円から5,000円程度が相場です。家計に無理のない範囲で、必要な保障を選びましょう。
まとめ:吸引分娩に備えるなら妊娠前の保険加入が鍵
吸引分娩は異常分娩として健康保険が適用され、処置費用の自己負担は約6,000円から9,000円程度と比較的少額です。出産育児一時金50万円も受け取れるため、正常分娩と比べて経済的負担が大きく増えることはありません。
一方、民間の医療保険や女性保険からは、手術給付金と入院給付金を合わせて10万円から20万円程度の給付を受けられる可能性があります。ただし、妊娠前に加入していることが絶対条件であり、妊娠後の加入では給付が制限されるケースがほとんどです。妊娠・出産を考えている方は、できるだけ早い段階で保険に加入し、安心して出産に臨める準備を整えることをおすすめします。
監修者からひとこと

スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
吸引分娩は、医学的に必要と判断された場合に行われる安全な処置です。ファイナンシャルプランナーとして多くの出産を控えた方々の相談を受けてきましたが、保険の知識不足により適切な備えができていないケースが少なくありません。特に、妊娠後に保険加入を考える方が多いですが、その時点では給付制限があり、十分な保障を得られないのが現実です。
妊娠・出産には様々なリスクがあり、吸引分娩だけでなく帝王切開や切迫早産など、予期せぬ事態が起こる可能性があります。健康保険により医療費の負担は抑えられますが、入院中の収入減少や差額ベッド代などを考慮すると、民間保険による備えは非常に有効です。結婚や妊娠を考え始めた段階で、医療保険や女性保険への加入を検討することを強くおすすめします。保険料は月額数千円程度ですが、万が一のときに受け取れる給付金は家計の大きな支えとなり、安心して出産に臨むことができます。