スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
保有資格
AFP・2級FP技能士
専門分野・得意分野
生命保険・社会保障・金融全般に精通。保険業界での実務経験をもとに、ユーザー目線で正確かつ中立的な情報発信を行っています。
60歳以降も働きたいけれど、「働きすぎると年金が減るらしい」「家計のために収入を増やしたいのに損にならない?」と迷う方は少なくありません。老後資金の不安があるほど、働き方の正解がわからなくなりますよね。
結論として、一定の収入を超えると老齢厚生年金が調整されます。ただし減額があっても手取りや将来の年金増額まで含めて考えると、必ずしも損とは限りません。
働きすぎると年金が減る理由は「在職老齢年金」
年金が減ると聞くと不安になりますが、対象や計算方法は決まっています。
まずは制度の全体像を押さえて、家計と収入のバランスをイメージしましょう。
在職老齢年金で押さえるべきポイントを先に整理します。
自分の年金月額と給与を当てはめれば、減額の有無が判断しやすくなります。
在職老齢年金でチェックしたい5項目
1. 減るのは老齢厚生年金だけ
60歳以降に厚生年金へ加入して働くと、給与と老齢厚生年金の合計に応じて年金が調整されます。これが在職老齢年金の仕組みです。
対象は老齢厚生年金の報酬比例部分のみで、老齢基礎年金には影響しない点を押さえておきましょう。
2. 支給停止調整額の基準
2025年度の支給停止調整額は月51万円です。給与と年金の合計がこの金額を超えると減額が始まります。
なお2026年4月からは基準が月62万円へ引き上げ予定で、減額の対象者が減る見込みです。
3. 減額の計算式と考え方
基本月額(老齢厚生年金の月額)と、総報酬月額相当額(給与と賞与の月平均)を合算して判定します。
合計が基準を超えた場合、超えた分の半分が支給停止となるため、働いた分がそのまま消えるわけではありません。
4. 基準額は毎年変わる
支給停止調整額は賃金や物価の動きで毎年見直されます。昨年は50万円、2025年度は51万円というように変動します。
今後も改定されるため、最新の基準で試算することが老後資金の精度を高めます。
5. 減った分は後から戻らない
在職中に支給停止された年金は、退職後にまとめて受け取れるものではありません。その期間は年金が発生しなかった扱いになります。
だからこそ、収入と年金の合計を家計全体で見て、納得できる働き方を選ぶことが重要です。
注意ポイント
在職老齢年金は「働きすぎ防止」ではなく、年金と賃金の二重給付を調整する仕組みです。減額だけに注目せず、世帯の手取りと将来の年金増額まで含めて判断しましょう。
いくらまでなら年金が減らない?目安の考え方
基準額を知っていても、自分の家計に落とすには目安が必要です。
ここでは2025年度の基準で、考え方をシンプルに整理します。
年金月額と給与の合計で51万円以内が目安
基本月額と総報酬月額相当額の合計が51万円以内なら、老齢厚生年金は全額支給されます。
たとえば年金月額が15万円なら、給与と賞与の月平均を36万円以内に抑えると減額を避けられます。
51万円を超えたら超過分の半分だけ減る
合計が55万円なら、超過4万円の半分である2万円が支給停止額になります。
年金は13万円になりますが、給与と合わせた世帯の手取りは増えるケースが多いです。
年金を減らさずに働く3つの方法
減額を避けたい場合、選べる選択肢は大きく3つあります。
それぞれ家計への影響が違うため、メリットと注意点を確認しましょう。
方法の全体像を把握してから、自分に合う順で検討すると迷いが減ります。
無理のない働き方は、長く続けられる老後資金づくりにも直結します。
年金を減らさずに働くための5つの視点
1. 収入を基準額以下に調整
合計51万円以内に収まるように、勤務日数や時間を調整する方法です。働く量を調整できる職種や雇用形態なら取り入れやすいでしょう。
ただし収入を下げすぎると家計が苦しくなるため、年金を守る目的だけで無理に減らさないことが大切です。
2. 厚生年金に加入しない働き方
週20時間未満の短時間勤務や業務委託などで厚生年金の対象外になれば、在職老齢年金の調整は受けません。
一方で健康保険の切り替えや保険料負担が増えることがあるため、手取りの変化まで確認して選びましょう。
3. 年金の繰下げ受給
65歳以降も働く予定なら、年金を受け取らずに繰下げして増額を狙う選択肢があります。繰下げ中は在職老齢年金の対象にならず、支給停止の心配がありません。
ただし繰下げ期間の生活費が必要で、健康状態や家族の状況も含めて総合判断が欠かせません。
4. 標準報酬月額の決まり方
給与の区切り方によって標準報酬月額が変わるため、収入調整をする場合は決定時期を意識すると効果的です。
特定の数か月だけ収入が高いと等級が上がりやすく、基準超えの判定につながる点に注意しましょう。
5. 健康保険料と手取りも確認
厚生年金の加入有無や収入調整は、健康保険料や税金にも影響します。
年金だけを見て決めるのではなく、世帯の手取りと老後資金の増え方をセットで比較しましょう。
働いて年金が減っても損とは限らない3つの理由
年金が減ると聞くと損をした気分になりますが、働くメリットもあります。
家計・将来の年金・健康の3つの視点で整理します。
| 特徴 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 減額しても給与が入る | 世帯の手取りが増えやすい | 税・保険料で手取り差を確認 |
| 厚生年金に加入し続ける | 在職定時改定で将来の年金が上乗せ | 増額は小さく積み上がる |
| 就労で生活リズム維持 | 健康寿命の延伸に期待 | 無理な働き方は逆効果 |
手取り収入が増える
在職老齢年金で減るのは超過分の半分だけです。給与が入る分、合計の手取りは増えるケースが多いと考えられます。
家計の安心感を高めやすい点は、働き続ける大きな価値と言えるでしょう。
将来の年金が上乗せされる
65歳以降も厚生年金に加入して働けば、在職定時改定で毎年10月に年金額が見直されます。働いた実績が年金に反映される仕組みです。
在職中に一部が減っても、生涯で受け取る年金が増える可能性があります。
健康維持につながりやすい
無理のない範囲で働くことで生活リズムや社会とのつながりが保たれやすく、心身の健康維持に役立ちます。
健康寿命が延びれば医療費や介護費の負担が抑えられ、家計面でもプラスに働きます。
注意ポイント
年金を守るために働き方を極端に変えると、収入減や社会保険の負担増で逆に家計が苦しくなることがあります。減額の有無ではなく、世帯の手取り合計と将来の安心で判断しましょう。
FPに聞く!年金と仕事のバランスの決め方
制度がわかっても、自分の家計に合う働き方を決めるのは難しいものです。34歳女性の質問にFPが答える形で、判断のコツを整理します。
34歳・女性
働きすぎると年金が減ると聞きましたが、働かない方が得なのでしょうか?
スマホdeほけん
減額があっても給与が入るため、手取り合計は増えることが多いです。年金だけで損得を決めず、家計全体の収入で考えるのが大切です。
34歳・女性
年金が減らないように収入を調整するのはアリですか?
スマホdeほけん
生活費や貯蓄に余裕があるなら選択肢になります。ただし家計が苦しくなるほど抑えるのは本末転倒なので、無理のない範囲で行いましょう。
34歳・女性
厚生年金に加入しない働き方に変えると、どんな影響がありますか?
スマホdeほけん
在職老齢年金の対象外になりますが、健康保険料や手続きが変わることがあります。手取りがどう動くかまで確認して選ぶと安心です。
34歳・女性
繰下げ受給は働く人に向いていますか?
スマホdeほけん
働いている期間の生活費を賄えるなら、増額効果を活かしやすいです。健康面や家族の状況も含め、長期視点で検討することが重要です。
34歳・女性
結局、どんな順番で考えると失敗しにくいですか?
スマホdeほけん
受給見込みと生活費を比べて不足を出し、次に働き方の候補を並べます。最後に税金や保険料を含む手取りで比較すると、家計に合う結論が出やすいです。
働きすぎと年金に関するQ&A
最後によくある疑問をまとめます。
「結局どうすればいいのか」を整理して、家計の行動につなげましょう。
Q1. 働きすぎると必ず年金が減りますか?
A. 必ず減るわけではありません。基本月額と総報酬月額相当額の合計が基準額以内なら、老齢厚生年金は減額されません。
年金月額と給与の合計を一度試算すると、自分が対象かどうかが明確になります。
Q2. 2025年度の基準額はいくらですか?
A. 2025年度は月51万円が支給停止調整額です。合計が51万円を超えた場合に超過分の半分が支給停止になります。
2026年4月からは月62万円へ引き上げ予定で、基準は今後も変わる点に注意しましょう。
Q3. 減額された年金は退職後に戻りますか?
A. 戻りません。在職中に支給停止された分は、その期間の年金が発生しなかった扱いになります。
減額が気になる場合は、働き方や収入の調整を含めて考える必要があります。
Q4. 年金を減らさないために厚生年金に入らない方がいい?
A. 一概には言えません。加入しないと減額は避けられますが、将来の年金上乗せの機会がなくなります。
健康保険料や税金も変わるため、手取りと老後資金の増え方を比べて決めましょう。
Q5. 年金と仕事のバランスに迷ったらどうすれば?
A. 受給見込みと生活費の差を数字で出し、働き方ごとの手取りを比較するのが近道です。
自分で難しい場合はFPに相談し、家計に合う働き方と老後資金の組み立てを整理すると安心です。
まとめ|年金の減額より「家計の手取りと老後資金」で判断しよう
働きすぎると年金が減るのは、在職老齢年金により老齢厚生年金が調整されるためです。2025年度は合計51万円を超えると減額が始まりますが、超過分の半分だけが止まる仕組みで、働けば手取りが増えるケースが多いのが実情です。
年金を減らさず働く方法は、収入調整、厚生年金に加入しない働き方、繰下げ受給などがあります。大切なのは減額の有無ではなく、家計の手取り合計と将来の安心で働き方を決めることです。
監修者からひとこと



スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
在職老齢年金は仕組みを知らないと不安が先に立ちますが、基本月額と総報酬月額相当額を並べるだけで、減額の有無や影響ははっきりします。まずはご自身の年金見込みと給与を数字で確認し、家計の手取りがどう変わるかを見える化しましょう。
そのうえで、収入調整や加入の有無、繰下げ受給の選択肢を比較すれば、家庭ごとに納得できる働き方が決めやすくなります。老後資金は早めに整理するほど、選べる道が増えて安心につながります。