スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
保有資格
AFP・2級FP技能士
専門分野・得意分野
生命保険・社会保障・金融全般に精通。保険業界での実務経験をもとに、ユーザー目線で正確かつ中立的な情報発信を行っています。
「過去の医療費をまとめて申告したい」「10万円は5年分の合算で良い?」と迷う方へ。
本記事は、5年分の申告可否と年別計算の必須ルール、還付申告・更正の請求の期限、対象費目、e‑Tax手順までをFPが整理。家計や老後資金と両立できる実務も解説します。
結論|5年分まとめて「申告」可、ただし年別集計で合算不可
医療費控除は過去5年分までさかのぼって一度に申告可能ですが、判定は各年単位です。5年合算で10万円超えを満たす扱いはできません。
「その年に実際に支払った医療費」−「保険などの補填」を年別に集計し、年ごとの控除額を出すのが原則です。
まずは「自分が申告できるか」を次のチェックから確認しましょう。導線の順に進めれば迷いません。
1. 対象期間と申告期限を確認
会社員等の還付申告は、各年の翌年1月1日から5年以内が期限です。個人事業主の更正の請求は、その年の申告期限から5年です。
カレンダーに年別の最終期限を記入し、まとめ申告でも年ごとに書類を用意しましょう。
2. 年別で10万円(又は5%)の基準を見る
各年の控除額は「医療費-補填金-10万円(総所得200万円未満は5%)」で判定します。5年通算の合算基準は認められません。
出産や手術等のあった年だけ該当し、他年は非該当というケースも普通にあります。
3. 補填金の差し引き方法を理解
生命保険給付や高額療養費等は、受け取った人の医療費から個別に差し引きます。家族合算前に人別で控除しましょう。
支給決定が翌年でも、原則は支給対象年の医療費から控除する考え方で整理します。
4. 家族分の合算と負担者の原則
生計を一にする家族分は合算できます。申告者は実際に負担した人で、税率の高い人が負担していれば減税効果は大きくなります。
扶養・同居の有無は問いませんが、負担者の整合を台帳で残しておきましょう。
5. e‑Tax・郵送の提出手段を選ぶ
自宅で完結するe‑Taxが便利です。紙提出や郵送も可能ですが、まとめ申告でも年別に明細と計算を用意します。
医療費通知(医療費のお知らせ)があれば、該当分は明細作成を省略できます。
注意ポイント
「5年まとめて」は提出手続きの話で、判定は年別。まず年ごとの台帳を整え、該当年だけを確実に申告しましょう。
期限と手続き|還付申告と更正の請求を使い分け
同じ「さかのぼり」でも入口が違います。会社員等は還付申告、個人事業主は更正の請求が基本です。
年別の締切を把握し、遅延を避ける運用にしましょう。
1. 還付申告(会社員等)
各年の翌年1月1日から5年以内に申告。例:2021年分は2026年12月31日までが目安です。年ごとに明細と計算書を用意します。
年末調整済みでも申告可能で、他の控除や寄附金と合わせて提出できます。
2. 更正の請求(個人事業主等)
各年の法定申告期限から5年以内に請求。例:2021年分は2027年3月15日頃までが基準です。
提出済み申告の訂正で、納め過ぎの税金の還付を求める手続きです。
| 特徴 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 終身保険 | 貯蓄性と保障で突発医療費の備えに | 早期解約は元本割れリスク |
| 変額保険 | 保障と資産形成を両立し老後資金も後押し | 市況次第で評価額が変動 |
| 養老保険 | 満期金を計画原資にできる | 返戻率は相対的に低め |
対象・対象外費目|迷いやすい線引きを年別に整理
治療を目的とする支出が中心です。年別に領収・医療費通知・交通費メモを紐づけましょう。
対象外は快適性費用や予防的支出など。判定理由をメモに残すと後日の照会に強くなります。
1. 治療費・処方薬・出産費用
医師等の診療、処方薬、妊娠判明後の健診・分娩費は対象。美容目的や無痛分娩などは対象外になり得ます。
市販薬は治療目的のみ対象で、健康増進のサプリ等は除外します。
2. 通院交通費の可否
電車・バスは最短経路の運賃で対象。やむを得ないタクシーは可、マイカーの燃料・駐車場は不可です。
付き添いの交通費は、本人のみでの通院が困難等の必要性がある場合に限り得ます。
3. 付添費・介護関連
付添料や一定の介護サービスは対象。要件・証憑を台帳で管理しましょう。お見舞い交通は対象外です。
おむつ代は医師の証明がある長期寝たきり等で対象になります。
4. 対象外(定期・グリーン等)
定期券区間、グリーン・指定席差額、差額ベッド、院内レンタル、予防接種や診断書等は原則対象外です。
判定に迷う費目は注記を残し、根拠とともに保存しましょう。
注意ポイント
対象・対象外は家計の実費に直結。線引き理由をメモしておくと、年別の再計算や照会対応がスムーズです。
提出方法|e‑Taxと紙の実務ステップ(年別)
まとめ申告でも、入力・書類は年別です。医療費通知の利用で明細作成を省力化できます。
交通費は「その他の医療費」区分に合算し、上乗せ料金は除外します。
1. 台帳作成(年別・人別・支払先別)
各年ごとに人別→医療機関別で集計。交通費メモも同束に。月別ではなく年別のフォルダで管理します。
後工程での突合用に、領収書へナンバリングしておくと効率的です。
2. 補填金の人別控除
保険給付・高額療養費は受給者本人の医療費から控除。ダブり控除を避けるため、年別に注記します。
支給時期が翌年でも、対象年の費用に対応づけて整理します。
3. e‑Taxまたは紙で入力
「医療を受けた人」「支払先」「区分」「合計額」を入力。給与等の所得を先に入力すると計算が正確です。
紙は所轄税務署へ持参・郵送。複数年分を同封しても、年別の様式に分けて作成します。
4. 医療費通知の活用
通知記載分は明細作成を省略可能。記載外の月(例:10〜12月)は従来通り明細を作ります。
通知と領収書の差異は注記し、合計に反映します。
5. 控えと証憑の5年保存
提出不要でも保存義務あり。クラウドに画像保存し、台帳とリンクさせると検索性が高まります。
年別ボックスに「破棄予定年月」を明記し、誤廃棄を防止します。
FPに聞く!医療費控除を5年分まとめて申告するリアル
読者の疑問を想定し、実務で役立つ視点をQ&A形式で整理。家計・資産形成・保険の連携も確認します。
34歳・女性
5年分を「合算10万円」で出せますか?
スマホdeほけん
できません。各年で基準判定と計算を行います。まとめて提出できても、年別の台帳が必須です。
34歳・女性
どの年から手を付けるのが効率的?
スマホdeほけん
期限が近い古い年から。次に金額が大きい年を優先します。年別の最終期限を一覧化しましょう。
34歳・女性
家族の誰が申告者になるべき?
スマホdeほけん
実際の負担者が原則です。負担を高税率の方に集約できていれば、節税効果は高まります。
34歳・女性
家計や老後資金と並走するコツは?
スマホdeほけん
固定費最適化と目的別口座の自動積立が基本。長期の資産形成はつみたて投資や変額保険、収入減には就業不能保険で備えます。
34歳・女性
交通費や市販薬の扱いで注意点は?
スマホdeほけん
運賃は「その他の医療費」に合算、やむを得ないタクシーのみ対象。市販薬は治療目的に限定されます。
よくある質問(Q&A)
提出前の最終確認に。年別集計・期限・入力ミスを防ぐポイントを凝縮しました。
最新の運用は公的情報で必ず確認してください。
Q1. 2016年分と2017年分以降では提出書類が違いますか?
A. はい。2016年分までは領収書提出が必要で、2017年分以降は明細書で提出します。保存義務は5年あります。
Q2. 医療費通知があれば明細は不要?
A. 記載分は明細省略可ですが、記載外の分は明細作成が必要です。通知と台帳の差異を注記しましょう。
Q3. 期限を過ぎた年はもう無理?
A. 期限超過は原則不可です。還付申告・更正の請求ともに、年別の法定期限から5年以内を厳守しましょう。
Q4. まとめ申告で必要書類は増えますか?
A. 年数分の明細・台帳・証憑が必要です。e‑Taxなら入力と保存が一元化でき、作業負担を抑えられます。
Q5. 家計負担を抑える実務は?
A. 医療費予備費の設定と固定費見直しを優先。資産形成は少額から自動化し、変額保険や就業不能保険でリスクに備えます。
まとめ|5年分は「手続き一括・年別判定」でミスゼロへ
医療費控除は5年分のまとめ提出が可能ですが、判定は年別・補填は人別が鉄則です。期限管理と台帳整備で、還付漏れと入力ミスを防ぎましょう。
家計の固定費最適化と目的別口座、長期の資産形成(変額保険等)を並走させれば、突発医療費にも揺れない家計基盤ができます。
監修者からひとこと



スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
「5年まとめて」は提出手続きの利便性に過ぎず、実務は年別集計が大前提です。年別×人別×支払先別の台帳を整え、補填金のひも付けを先に行えば、計算・入力・照会対応まで一気通貫で精度が上がります。
節税と同時に、固定費の最適化や目的別口座、就業不能リスク対策、長期の資産形成を組み合わせることで、医療費増にも対応できる持続的なキャッシュフローが実現します。