スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
保有資格
AFP・2級FP技能士
専門分野・得意分野
生命保険・社会保障・金融全般に精通。保険業界での実務経験をもとに、ユーザー目線で正確かつ中立的な情報発信を行っています。
軽いけがの応急処置に使う絆創膏やガーゼでも、その購入費用を適切に整理すれば、家計の所得税・住民税負担を抑える一助になります。
本記事では、医療費控除の対象判定の考え方から、明細書・e-Taxの具体的な記載方法までを、税務実務の視点を交えてわかりやすく整理します。
あわせて対象外になりやすい支出や、セルフメディケーション税制との制度上の違いも比較しながら解説します。
老後資金や長期資産形成と両立しながら今日から無理なく実践できる手順も提示しますので、節税と家計管理の両方に役立ててください。
絆創膏・ガーゼは対象?基本と判断基準をサクッと確認
医療費控除は、その年中に支払った「治療を目的とする医療費」が一定額を超えた場合に、所得から控除できる制度です。
絆創膏やガーゼについても、負傷部位の保護・止血など明確に治療行為を補完する目的で購入した費用であれば、医療費控除の対象に含めることができます。
一方で、予防・美容・一般的な衛生管理のみを目的とした支出は原則として対象外となるため、「何のために購入したか」という目的の整理が欠かせません。
判定に迷う場合は、購入時に用途や医師の指示内容をメモしてレシートに添付し、後から説明可能な状態にしておくと安全です。
使い切り不要?購入時期と計上ルールの要点
絆創膏やガーゼの費用は、「使用した日」ではなく「購入した日」が属する年分の医療費として計上するのが原則です。
購入時点で負傷の治療を目的としているのであれば、未使用分が残っていてもその年の医療費として使い切りを前提とせずに計上して差し支えありません。
ただし、明らかに日常備蓄を超える極端な買いだめは、税務署から治療目的と認められないリスクがあるため、常識的な数量にとどめておくことが重要です。
レシート原本の保管とあわせて、「○月○日のけがの処置用」「子どもの擦り傷処置用」など用途を簡潔にメモしておくと、後日の照会にも対応しやすくなります。
申告手順の全体像:迷わないチェックポイント
あらかじめ全体のフローを把握しておくと、医療費控除の明細作成やe-Tax入力での記入漏れ・数字の食い違いを大きく減らせます。
次のステップ順に確認しながら、必要なレシート・明細と金額データを整理していきましょう。
医療費控除の進め方(チェックリスト)
1. 年間医療費の集計と補填額の控除
まずは1年分の医療機関・ドラッグストア・交通費など、医療費に該当する支出を一覧表に集計します。そのうえで、保険金や高額療養費、出産育児一時金などの補填額を、対応する医療費から差し引きます。
医療費控除の対象となるのはあくまで各種補填を差し引いた後の「実質負担額」です。補填ごとに支給元・対象期間・金額をメモしておくと、計算過程を説明しやすくなります。
2. レシート分類と明細書の区分選択
次に、集計したレシートを「医療機関への支払い」「薬局・ドラッグストアでの医薬品購入」「交通費」など、明細書の区分に合わせて分類します。
絆創膏やガーゼは、ドラッグストアでの購入であれば原則として「医薬品購入」の区分にまとめ、店舗名・購入金額とともに記載すると整理しやすくなります。
3. ドラッグストア購入分の入力
同一店舗でのレシートが複数ある場合は、医療費控除の対象となる品目だけを抜き出し、店舗ごとに合算して入力します。このとき、日用品や化粧品など対象外の品目は医療費集計から除外します。
対象外の衛生雑貨や日用品を医療費と混在させないために、レシートの余白に「対象」「対象外」とメモを書き込んだり、付箋やラインマーカーで区別しておくと、後の集計が格段にスムーズです。
4. 交通費の整理と記録方法
公共交通機関を利用した通院費は、領収書がなくても「利用日・区間・片道運賃・往復金額」を家計簿や台帳に記録しておけば医療費として認められます。
タクシー利用は、緊急性が高く他の手段が難しい場合に限り対象となるのが一般的です。領収書には「○○病院受診のため」など受診先や目的を書き添えておくと説明力が高まります。
5. e-Tax/書面の最終確認
申告前には、源泉徴収票と申告書の金額が一致しているか、明細書の合計と申告書の医療費控除欄の金額が一致しているか、添付・提出が必要な書類に漏れがないかを順にチェックします。
e-Taxで送信したデータは控えを必ず保存し、翌年以降のたたき台として再利用すると作業効率が上がります。還付口座は名義・番号ともに正確かを確認し、入力ミスによる差し戻しを防ぎましょう。
注意ポイント
領収書自体は提出不要ですが、税法上5年間の保管義務があります。年度ごとに封筒やクリアファイルで整理し、問い合わせや税務調査に対してすぐに提示できる状態を整えておきましょう。
明細書の書き方:絆創膏・ガーゼの正しい記載例
医療費控除の明細書では、「医療を受けた人の氏名」「支払先(店舗名)」「医療費の区分」「支払金額」「補填金額」をもれなく記入することが求められます。
ドラッグストアで購入した絆創膏やガーゼは、支払先欄に店舗名を記載し、区分は「医薬品購入」を選択したうえで、消費税込みの支払総額を記入するのが基本です。
保険金や給付金などの補填がない場合は、補填額欄は空欄で構いません。同一店舗で複数回購入している場合は、対象となる品目だけを抜き出して店舗単位で合算入力しても問題ありません。
あとで問い合わせを受けた際に備え、家計簿や台帳に記録した購入明細メモをセットで保管しておくと確認作業がスムーズになり、説明根拠としても有効です。
| 特徴 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 絆創膏・ガーゼ | けがの処置など治療目的の購入であれば医療費控除への計上が可能 | 明らかな買いだめや用途不明の購入は否認リスクがあり、用途の記録が重要 |
| OTC医薬品 | 条件を満たせばセルフメディケーション税制の対象にもなり、控除の選択肢が広がる | 対象医薬品かどうかの確認が必須で、レシート・パッケージのマーク等の管理が求められる |
| 交通費 | 公共交通機関利用分は記録さえあれば領収書が不要で、通院コストを幅広くカバーできる | タクシーは緊急時等に限定され、自家用車の燃料費・駐車場代は原則対象外 |
ドラッグストアの「対象/対象外」を具体例で理解
医療費控除で認められるのは、治療と直接の因果関係がある支出です。絆創膏・ガーゼ・処方箋薬などはその典型例ですが、マスクや一般的な栄養ドリンクは、通常の衛生・滋養目的の範囲では対象外となります。
処方箋に基づく医薬品の購入は原則対象となる一方で、健康維持・美容目的のサプリメントや健康食品は、医療費ではなく「一般の生活費」とみなされるため、医療費控除には含められません。
判断の難しいグレーゾーンの支出については、用途や医師の指示内容をメモに残し、領収書や処方内容とセットで保管することで、後日の説明可能性と証拠性を高める対応が重要です。
最終的な取り扱いに不安がある場合は、申告前に税務署の相談窓口や税理士などの専門家に確認しておくと安心です。
実務ヒント
レシートはその場で「医療費対象/対象外」を余白に書き分け、月ごと・店舗ごとに封筒へインしておくと集計が簡単になります。四半期ごとに一度集計しておくと、年末の負担を大きく抑えられます。
医療費控除とセルフメディケーション税制を比べて選ぶ
医療費控除とセルフメディケーション税制は、同じ年分についてはどちらか一方しか適用できません。そのため、年間の支出内訳を踏まえて、どちらの制度を使うと有利かを比較する必要があります。
ドラッグストアでのOTC医薬品の購入が多い年はセルフメディケーション税制、病院・クリニックでの診療費が多い年は医療費控除が有利になるケースが多く見られます。
1. 対象範囲の違いを把握
医療費控除は、診療・治療・入院費・通院交通費など治療関連の支出全般が対象となる一方、セルフメディケーション税制は対象OTC医薬品の購入費に限定されます。
まずは年間支出を「医療機関での支払い」と「ドラッグストアでの市販薬購入」に分けて整理し、両方の制度を適用した場合の控除額を試算してみましょう。
2. 控除計算のしきい値を確認
医療費控除は「医療費の実質負担額が10万円(所得200万円未満の場合は所得の5%)を超えた部分」が控除対象となり、セルフメディケーション税制は「対象OTC医薬品の購入額が1万2千円を超えた部分」が対象です。
どちらの制度が有利かは、単純な支出額だけでなく、所得水準や補填額、しきい値を超えた後の増分に対する控除効果も含めて比較する必要があります。
3. OTCの対象品目を特定
セルフメディケーション税制の対象となるOTC医薬品には、パッケージやレシートに専用マークや記載があります。公式の対象品目一覧も参照しながら、一つずつ該当の有無を確認しましょう。
対象品目と対象外品目が同じレシートに混在することが多いため、レシート上や家計簿上で区別しておくことが、入力ミスや差し戻し防止のうえで非常に重要です。
4. 補填額の取り扱いを反映
医療費控除を選ぶ場合は、高額療養費や民間保険の給付金・共済金などの補填額を、必ず該当する医療費から控除して計算します。重複して控除してしまわないよう注意が必要です。
補填金の支給が翌年になるケースでも、関係する年分の医療費から控除する扱いになるため、見込額と実績額の差異は、後日更正の請求などで調整する流れを想定しておきましょう。
5. 家計インパクトで最終判断
どちらの制度を選ぶかは、単に理論上の控除額だけでなく、手続きにかかる時間や必要書類の量、還付時期なども含めた「家計への総合インパクト」で判断することが大切です。
迷う年は双方の控除額を試算し、手取りベースのキャッシュフローにとってプラスが大きい制度を選択しましょう。判断が難しい場合は、税理士やFPに試算を依頼するのも一案です。
レシート保管・申告ミス防止のコツ
医療費控除の領収書・レシートは提出不要ですが、5年間の保存義務があります。年度ごとのファイルやボックスにまとめ、月別の仕切りを付けておくと、後からの検索性が高まります。
e-Taxで作成した申告データや医療費集計フォームのファイルは必ずバックアップを取り、翌年以降のたたき台として再利用しましょう。同じフォーマットを継続することで、年々作業負担が軽くなります。
交通費を集計する際は、定期券でカバーされている区間を除外し、自家用車の燃料費や駐車場代は対象外であることを台帳にも明記しておくと、家族間で認識を共有できます。
家族の医療費は「生計を一にする」範囲で合算できますので、世帯全体の医療費をまとめ、最終的な申告者は一般に所得が高い人とする方が節税効果が大きくなる傾向があります。
資産形成の視点:家計・老後資金と保険の上手な組み合わせ
医療費控除やセルフメディケーション税制で得られた還付金や、節税で生まれた余裕資金は、一時的な消費ではなく老後資金や教育費などの中長期の目的に振り向けると、家計の安定につながります。
長期の資産形成には、NISAなどの制度を活用した分散投資に加え、保障と運用を一体で行える変額保険を選択肢に含めることも考えられます。
変額保険は市場変動の影響を受けるため、元本割れリスクを踏まえたうえで、保険料水準が現在の家計と将来のキャッシュフローの両方に無理のない範囲かを検討することが重要です。
医療保障・就業不能保障・資産形成の役割分担を明確にし、必要に応じてFPなど専門家の助言を受けながら、全体としてバランスのとれたポートフォリオに整えていきましょう。
よくある質問(Q&A)

Q1. 絆創膏やガーゼは何枚単位までなら計上できますか?
A. 税法上、枚数の明確な上限は定められていません。実際のけがや手術後の処置など、治療との関連が説明できる範囲であれば、常識的な数量まで医療費として計上可能です。
ただし、家庭用常備薬を超えるような大口購入は用途説明が難しくなりやすいため、具体的な使用場面に見合った必要量の購入を意識してください。
Q2. レシートを失くしました。明細メモだけで申告できますか?
A. 公共交通機関の通院費については、日時・経路・金額を記録したメモで代替できる場合がありますが、絆創膏など物品購入費はレシート等の支払い証拠が原則必要です。
まずは購入店に領収書や購入履歴の再発行を依頼し、それが難しい場合はカード会社の利用明細などを組み合わせて、支払実態を補強する工夫をしましょう。
Q3. マスクや消毒液は対象になりますか?
A. 一般的な衛生目的や予防目的で購入したマスクや消毒液は、原則として医療費控除の対象外です。ただし、医師の具体的な指示に基づき治療の一環として使用する場合など、例外的に取り扱いが異なるケースもあります。
その場合は、診療明細書や指示内容が分かる文書と領収書を合わせて保管し、判断根拠を示せるようにしておくことが重要な証拠としてのポイントになります。
Q4. 家族の分はどこまで合算できますか?
A. 「生計を一にする」配偶者や親族の医療費は、扶養控除の有無に関わらず合算して医療費控除の対象とすることができます。同一世帯であれば、世帯主以外が申告者になることも可能です。
一般的には、合算した医療費を所得税率の高い人の申告にまとめることで、同じ支出額でも節税効果が大きくなる傾向があります。
Q5. セルフメディケーション税制とどちらを選べば良い?
A. OTC医薬品の購入額が多い年はセルフメディケーション税制、病院・歯科・入院などの支出が多い年は医療費控除が有利になるケースが一般的です。
両制度の控除額を試算し、節税額と手間を踏まえた手取り改善効果がより大きい方を選択するのが実務上のポイントです。判断に迷う場合は、専門家に試算を依頼するのも有効です。
まとめ:絆創膏・ガーゼは治療目的なら控除OK。賢く申告して家計を守る
絆創膏やガーゼの購入費用は、けがや術後の処置など明確な治療目的がある場合、医療費控除の対象として扱うことができます。明細の区分や補填額の控除方法、レシートの保管ルールを押さえれば、日常の応急処置費用も無理なく節税につなげる運用が可能です。
医療費控除とセルフメディケーション税制は、年間支出の内訳や家計の状況に応じて使い分けましょう。そこで生まれた余力は、老後資金や長期の資産形成に計画的に回し、医療リスクにも強い家計づくりを進めていくことが大切です。
監修者からひとこと



スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
医療費控除は「目的」と「証拠」をそろえることで安心して活用できます。絆創膏やガーゼのような少額でも積み上げれば差は出ます。対象外になりやすい衛生雑貨と区別し、記録を残す運用習慣が大切です。さらに制度で生まれた余裕は、固定費の見直しや長期の資産形成に回すと効果的です。家計全体のキャッシュフローを俯瞰し、保障と運用の役割を丁寧に設計すると、将来の不安は着実に小さくできます。