スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
保有資格
AFP・2級FP技能士
専門分野・得意分野
生命保険・社会保障・金融全般に精通。保険業界での実務経験をもとに、ユーザー目線で正確かつ中立的な情報発信を行っています。
「加給年金はいつまで?どんな場合に止まる?」と不安な方へ。結論、配偶者や子の要件・年金受給権の発生・年齢到達などで停止・終了が起きます。制度の趣旨と止まる条件、再計算のポイントを整理すれば、家計や老後資金の見通しは安定します。
本記事では、支給対象と適用開始、支給停止の具体要件、2022年改正の影響、停止後の振替加算や生活防衛の設計まで、初心者にもわかりやすく解説します。家計・老後資金・資産形成(変額保険等)の整合もあわせてチェックしましょう。
加給年金とは|老齢厚生年金に上乗せされる「家族手当」的な加算
加給年金は、老齢厚生年金の受給者に生計維持関係のある配偶者や子がいる場合に上乗せされる加算です。趣旨は、扶養を担う時期の生活補完にあります。
まずは対象・適用条件・開始の起点を把握して、自分が該当するか確認しましょう。該当時は届出が必要です。
最初に押さえる3ポイント
1. 支給対象者と適用条件(配偶者・子)
一般に、厚生年金の被保険者期間が通算20年以上(特例あり)で、65歳到達時点に生計維持する配偶者または子がいれば対象です。配偶者は原則65歳未満、子は18歳年度末まで(障害1・2級は20歳未満)などの年齢要件があります。
女性35歳・男性40歳以降の厚生年金加入15年以上でクリアできる「中高齢の特例」など、例外も確認しましょう。
2. いつから加算される?開始タイミング
加算開始日は加入240月(20年)の達成時期等で決まり、開始日が属する月の翌月分から自動反映されるのが原則です。退職等に伴う資格喪失日が起点になるケースもあります。
在職定時改定・退職改定のタイミングを踏まえ、損のない手続きを行いましょう。
3. 申請・届出の実務フロー
要件を満たしたら「加給年金額加算開始事由該当届」等の提出が必要です。生計維持や年齢を証する書類も用意しましょう。
未届だと加算が始まりません。判定に時間を要することがあるため、早めの準備が安心です。
注意ポイント
加給年金は自動付与ではありません。該当時の届出と、配偶者・子の状況変化(就労・受給権発生・年齢到達)時の異動届を忘れずに。
どんな人が支給停止になる?|具体的な停止・終了条件
支給停止は「扶養状態の変化」「配偶者・子に一定の年金受給権が発生」「年齢到達」などで生じます。停止=永久廃止とは限らず、65歳到達での終了と振替加算のセットが基本です。
停止・終了の主要パターンを以下に整理します。
支給停止・終了の主なトリガー
1. 配偶者に老齢厚生年金・退職共済の受給権が生じた
受給の有無ではなく「受給権の発生」で停止対象になります(全額停止中でも同様)。生年月日や加入期間に基づく権利発生時期を事前に確認しましょう。
停止判定は届出と機構の審査で行われます。遅延は過払・返還の原因に。
2. 配偶者が障害年金(1・2級)を受給している
障害厚生年金・障害基礎年金(1・2級)の受給期間中は停止に該当します。認定区分の変動があれば速やかに異動届を。
停止期間終了後は再開余地があるかを確認します。
3. 配偶者が65歳到達(翌月分から終了)
配偶者が65歳に達した月の翌月分から、加給年金は終了します。同時に、配偶者の老齢基礎年金に振替加算が付くのが一般的です。
振替加算の金額・判定には例外もあるため、年金事務所で個別確認を。
4. 子の年齢到達や婚姻・死亡・生計維持喪失
子は18歳年度末まで(障害1・2級は20歳未満)が原則。年齢到達・婚姻・死亡・生計維持の喪失で対象外となります。
年度またぎの判定に注意し、過不足のない届出を。
5. 離婚・死亡等で生計維持関係が消滅
生計維持が前提の加算のため、離婚・別居での維持喪失、受給者本人の死亡等でも終了・停止が発生します。
事実と時期がわかる書類を整え、手続きを進めましょう。
ここが核心
停止は「制度の不利益変更」だけではなく、ライフイベントの結果として自然に起こる現象です。振替加算・収入補填・支出最適化をセットで準備しましょう。
2022年4月の制度改正|対象縮小と経過措置のポイント
2022年改正では、配偶者側の年金権発生に着目した停止判定が明確化し、結果として対象が縮小しました。ただし、改正前に支給中・全額停止中だった一定のケースには経過措置が適用されています。
改正は「廃止」ではなく「要件の厳格化・整合化」。自分がどの枠に当たるかを確認しましょう。
| 特徴 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 改正後の停止判定 | 権利発生ベースで公平性を担保 | 実際に受給していなくても停止対象になり得る |
| 経過措置 | 改正前からの受給者を保護 | 経過対象かどうか個別確認が必要 |
| 振替加算 | 配偶者65歳到達後の家計を補完 | 金額・適用判定に例外、届出遅延で時差が出る |
家計への影響と備え|停止後の穴をどう埋める?
停止・終了は多くの世帯で数千~数万円規模の月次ギャップを生みます。3本柱(収入補填・支出最適化・資産取り崩し設計)で、老後資金を減らしすぎない運用に。
資産形成(変額保険・つみたてNISA・iDeCo)と保障(就業不能・医療)の役割分担も再点検しましょう。
1. 振替加算・在職年金・繰下げの再設計
配偶者の振替加算額の確認、在職老齢年金の影響、繰下げ受給の増額率を組み合わせて、最適な受給カーブを描きます。
世帯の手取りベースで比較し、生活水準に合う案を選択しましょう。
2. 固定費の棚卸し(保険重複・住居・通信)
重複保障の削減、住居費の適正化、通信・サブスクの見直しで月次キャッシュフローを改善。家計の「筋肉質化」が最優先です。
保険は必要最小限、資産形成は継続が原則です。
3. 取り崩しルール(率・順番・税制)
取り崩し率(例:年3~4%目安)や順番(課税口座→税優遇口座)を定め、税負担と市場リスクを最小化。相場下落時の解約は避けます。
現金クッションでショック耐性を確保しましょう。
4. 資産形成を止めない(変額・積立の継続)
停止ショックで長期運用(変額保険・投信)の積立を止めると、老後資金の将来値に大きく響きます。最低限は継続を。
リバランスとコスト管理を年1回点検します。
5. 緊急資金と予備費の確保
生活費6~12か月分の流動資金を別枠で保持。医療・介護の突発費は、一時金保険や先進医療特約で部分的に吸収します。
就業不能保険は収入の谷を浅くする有効な手段です。
FPに聞く!加給年金と老後資金のリアル(インタビュー)

読者の疑問にFPが具体的に回答します。制度と家計、両面からのヒントを凝縮しました。
34歳・女性
配偶者が65歳になって加給が止まります。何から見直せば?
スマホdeほけん
まず振替加算額と世帯の手取り推移を確認。足りない分は固定費見直しと繰下げ受給の比較検討、取り崩し率の設定で埋めるのがセオリーです。
34歳・女性
停止と同時に資産形成(積立)を減らすのはアリ?
スマホdeほけん
原則は避けたいです。長期の複利が失われます。生活防衛資金を厚くし、保険の重複削減で原資を捻出する方が合理的です。
34歳・女性
在職老齢年金の調整と加給の関係は?
スマホdeほけん
在職で老齢厚生年金が一部支給停止でも、加給の判定は別軸です。配偶者の受給権発生で停止要件に該当し得る点に注意してください。
34歳・女性
変額保険を解約して生活費に回すべき?
スマホdeほけん
相場次第で大きな機会損失に。まずは支出最適化と短期の現金確保で対応し、長期資産は維持するのが定石です。
34歳・女性
届出が遅れた場合のリスクは?
スマホdeほけん
過払の返還・支給遅延が生じます。イベント(誕生日・退職・受給権発生)前後は事前に年金事務所へ相談し、書類を整えましょう。
よくあるQ&A

Q1. 専業主婦(主夫)だと加給年金は廃止ですか?
A. 専業かどうかは直接要件ではありません。配偶者の65歳到達、老齢・退職・障害年金の受給権発生などで停止・終了します。
経過措置対象かどうかも併せて確認してください。
Q2. なぜ支給停止が拡大したのですか?
A. 権利発生の有無で公平に判定する趣旨から、2022年改正でルールが整合化されました。実際の受給の有無は問われない場面があります。
停止=制度廃止ではありません。対象縮小と理解しましょう。
Q3. 配偶者が遺族年金を受給中でも停止しますか?
A. 一般に遺族年金は停止要件の対象外です。老齢・退職・障害年金が主な停止トリガーです。個別に年金事務所で確認を。
届出と記録の整備でトラブルを防げます。
Q4. 特別支給の老齢厚生年金(60~64歳)は影響しますか?
A. 配偶者の厚生年金加入期間が20年未満なら、特別支給の受給で直ちに加給が停止するとは限りません。詳細は条件により異なります。
生年月日・加入歴で判定が変わるため、必ず個別確認を。
Q5. 停止後の家計ギャップはどう埋める?
A. 振替加算+固定費削減+取り崩しルールの設計で対応します。就業不能保険や医療保険は家計の谷を浅くする補助線になります。
資産形成(つみたて・変額)は可能な範囲で継続しましょう。
まとめ|条件とタイミングを先回りし、家計設計でブレを最小化
加給年金は、扶養期を補完する重要な加算ですが、配偶者・子の要件や年齢で停止・終了します。「いつ・なぜ止まるか」を家計表に反映し、振替加算・受給戦略・固定費最適化・取り崩しルールを整えれば、不安は管理可能です。
保障は必要最小限、資産形成は長期継続――この原則で、老後資金と日々の生活の両立を実現しましょう。
監修者からひとこと

スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
加給年金の停止はライフイベントに連動して生じます。イベント前にスケジュールを作り、届出・証拠書類・年金見込額を揃えるだけで、過払・不足の多くは防げます。停止後は振替加算・繰下げ・在職の組み合わせを家計ベースで最適化してください。
長期資産(変額保険・積立投資)は解約よりも設計調整が有効です。短期資金は別枠で確保し、ショック耐性を高めましょう。年1回の点検が、安心な老後の近道です。